[P21-3] 心室頻拍停止後にcardiac memoryによるT波変化をみとめた小児例
キーワード:cardiac memory (心筋メモリー), ベラパミル感受性心室頻拍, ST-T異常
【緒言】心室頻拍で当院を受診し薬物による頻拍停止後にST-T異常をみとめた1例を経験したので考察する。【症例】12歳男子、漏斗胸以外の既往はなく、学校心臓検診では異常なし。3か月前から吐き気を伴う動悸がときどき出現していた。入院当日より動悸、吐き気が持続するため救急車で当院ERを受診した。心室レート250bpm程度の右脚ブロック左軸偏位のwide QRS頻拍で、ATPで停止せずベラパミルで速やかに停止した。頻拍停止後の心電図ではII、III、aVFでST低下を伴う陰性T波、V1~V3の陽性T波、V4~V6の陰性T波をみとめた。軽度の心拡大、うっ血肝によるAST、ALT上昇、軽度にTnI、BNPは上昇していたが、エコーでの心収縮は良好で冠動脈病変はなかった。頻拍予防のためベラパミル内服し経過観察した。TnI、BNPは2日で正常化、ST低下は3日後には消失したが、T波異常が残存した。LPは陰性、心筋血流イメージングでは安静時の虚血はなく、QGSによる心機能評価は正常であった。トレッドミル運動負荷心電図では、安静時に平低~陰性であった誘導において運動強度が増すとT波が陽転化したが、終了後は元のT波形に戻った。運動負荷によるST低下やブロックはなかった。カテーテルアブレーションを検討している。【考察、結語】頻拍中の心電図から左室後乳頭筋付近を起源とするベラパミル感受性心室頻拍と診断した。残存したT波変化の極性はVT中のQRS波の極性とほぼ一致し、1982年にRosenbaumらが提唱したcardiac memory (心筋メモリー)の特徴と矛盾しなかった。トレッドミル運動負荷ではcardiac memoryはリセットされなかったが、VT停止後にT波異常の残存する小児に対する運動の安全性を評価するのには有用であった。