[P25-2] 小口径人工血管流量制御装置開発における圧閉バルーンの性能の最適化を目的とするシミュレーション解析
キーワード:小口径人工血管流量制御装置, Blalock-Taussig シャント, バルーン圧閉
【目的】低体重児や単心室血行動態における小口径人工血管を用いたBlalock-Taussigシャントは、過剰肺血流による合併症や死亡を引き起こす頻度が比較的高い。様々な流量調整の工夫がなされてきたが決定的な医療機器はない。我々は皮下ポートから充満調節する圧閉バルーンを組み込んだディスポーザブル流量制御装置の開発を開始した。そのバルーンの性能とデザインを規格として決定するためのシミュレーションの有用性を検討した。【方法】バルーン圧閉による人工血管の流動抵抗特性(主として圧力損失)を模擬回路で実測し、同時に理論モデルを構築して予測した。血液動粘度を有するグリセリン溶液をマグネットポンプで圧送する(流量0.1-0.5L/min)循環回路内にポリウレタン製模擬人工血管(径3.0、4.2、4.8mm、長さ10、20、30mm)を直列接続し、10mm上下流側の圧力差(圧力損失)を測定した。模擬人工血管を径6mm硬質円筒チューブで側面から押し込み圧閉(閉塞度0、50、80%)させた。圧力損失=液体粘性による摩擦損失(Darcy-Weisbach式)+流れのはく離(渦)損失(狭窄部断面積の関数)と規定され、模擬人工血管の被圧閉断面積として模擬回路では実測値、シミュレーションでは楕円近似値をそれぞれ用いた。【結果】閉塞度0、50%ではすべての径および長さの模擬人工血管で、流量―圧力損失曲線は実測とシミュレーションで一致した。閉塞度80%の場合には実測曲線がシミュレーション曲線から上方に平行移動し、長さ10mmの場合には大きく偏位した。閉塞に伴う断面形状変化の大きい場合での補正係数の導入が必要と考えられた。【結論】更なる微調整が必要であるものの、シミュレーションによる候補デザインの絞り込みにより、試作品製造、実測による性能評価、そして動物埋植POC取得へと円滑な規格決定が可能になると考えられた。