第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

集中治療・周術期管理

デジタルオーラルII(P25)
集中治療・周術期管理 2

指定討論者:小田 晋一郎(九州大学大学院医学研究院循環器外科学)
指定討論者:杉村 洋子(千葉県こども病院)

[P25-6] 電気的インピーダンス法を用いて、動脈管閉鎖術前後の連続的な血行動態の解析をした1例

淺野 聡, 高橋 努 (済生会宇都宮病院 小児科)

キーワード:動脈管開存症, 電気的インピーダンス法, 周術期管理

【背景】
動脈管開存症の外科治療後に、postligation cardiac syndrome(PLCS)として血圧低下や後負荷不整合による血圧上昇を来すことがある。心臓超音波検査による断続的な報告はあるが、動脈管閉鎖直前後から連続的に血行動態を解析した研究はほぼない。
【目的】
PLCSの血行動態について閉鎖直前から連続的な解析を行う。
【方法】
観血的動脈血圧測定法と、電気的インピーダンス法(エスクロン)を用い、閉鎖前30分から術後48時間後まで各検査項目を計測した。前負荷指標でTFC(Thoracic Fluid Content)、SV(Stroke Volume)、SVV(Stroke Volume Variation、輸液反応性)、心収縮指標でICON (Index of Contractility)、後負荷指標でSVR(systemic vascular resistance)、その他にCO、HRを測定した。また、経胸壁心臓超音波検査で左室拡張末期径(LVIDd)、左房径大動脈比(LA/Ao)を計測した。
【結果】
動脈管閉鎖直後からHRとSVRが上昇、収縮期血圧、ICON、SVとCOは低下した。術後2時間でもICON低値、HR低下したが、SV・COは上昇した。一方で、ICONは術後24時間から上昇した。LVIDd、LA/Aoは術後4~6時間で低下、術後12~24時間にかけ上昇した。一方術後6~24時間以上にかけ、SVVは低値でTFCも高値だった。
【考察】
閉鎖直後のCO低下は、ICON低下によるSV低下が原因で、HR上昇はその代償的な反応である。また、閉鎖直後の収縮期血圧低下とSVR上昇から、ICON低下の原因は後負荷不整合である。術後4~6時間で前負荷は低下し術後12時間まで低かったが、術後6~36時間はSVVが低いため輸液負荷の適応は低く、陽性変力作用のカテコラミンが有用である。CO低下時はTFC上昇の傾向があり、肺うっ血を伴っていることを確認した。また、カテコラミンの使用により術後24時間でICON上昇し、心収縮が改善した。
【結語】
電気的インピーダンス法を用い、動脈管の突然の閉鎖による血行動態をリアルタイムに解析し治療選択にも結びついた。