[P27-2] 心筋生検によって診断に至ったLeigh脳症の一例
Keywords:Leigh脳症, ミトコンドリア心筋症, 心筋生検
【はじめに】Leigh脳症はミトコンドリア機能障害によって引き起こされる神経変性疾患である。ミトコンドリア機能障害は通常、骨格筋生検によって証明される。今回、骨格筋生検ではなく、心内膜心筋生検(EMB)によってLeigh脳症の診断に至った一例を報告する。【症例】17歳の男性、左室肥大の精査目的に入院した。7ヵ月時に運動発達遅滞が出現し、1歳時に感冒を契機とした代謝性アシドーシスを繰り返し、髄液の乳酸・ピルビン酸が高値であった。脳MRIのT2強調像で橋背側に左右対称性の点状高信号域を認めLeigh脳症が疑われたが骨格筋生検では異常なく診断に至ることはできなかった。12歳時に心臓超音波検査で左室肥大、15歳時に脳MRIで両側被殻の壊死性変化、16歳時に痙攣発作が出現した。17歳時のEMBで心筋の細胞質空胞化とミトコンドリアの著明な増加を認めた。心筋の呼吸鎖酵素活性は複合体 I の活性低下を示し、免疫組織病理学的分析では複合体 I の染色性が低下していた。遺伝子検査でMT-ND6遺伝子のm.14453 A>G変異が同定された。臨床経過と合わせてLeigh脳症、ミトコンドリア心筋症の診断となった。その後、運動機能は徐々に退行し痙攣の頻度も増加したため、21歳時に5-アミノレブリン酸(5-ALA)の内服を開始し痙攣の頻度は減少した。現在、22歳で歩行はできるものの、運動機能の退行は徐々に進行している。【考察】EMBによってLeigh脳症の診断に至ることができた。ミトコンドリア病では生検を罹患臓器から行うことが重要である。ミトコンドリア病は成人期に心血管合併症を呈することがある。5-ALAの有効性については長期的なフォローアップが必要である。EMBはミトコンドリア病の骨格筋生検による診断が困難な場合に有用な診断方法になり得る。