[P38-2] フォンタン患者の不妊治療について考えるー1型糖尿病・不妊症合併のフォンタン術後症例を経験してー
Keywords:フォンタン, 妊娠, 不妊症
【背景】フォンタン患者の妊娠・出産に関してはいくつか報告があり、母体合併症のリスクが上昇するが、不妊治療の実態は明らかではない。【目的】今回、我々は1型糖尿病と不妊症を合併したフォンタン患者に不妊治療を行った。フォンタン患者における不妊治療について考察する。【症例】29歳、心室中隔欠損を伴わない肺動脈閉鎖症、右室低形成、1型糖尿病、不妊症【経過】4歳5ヶ月時にフォンタン手術を受けた。その後は不整脈や血栓塞栓症などの心イベントはなく経過していた。結婚を機に挙児希望があり、25歳時に前医で心臓カテーテル検査を施行。CVP (11)mmHg, PA wedge (9)mmHg, LV 89/edp12mmHg, Ao saturation 92%, LVEF 65%, Cardiac Index 3.2L/min/m2,房室弁逆流はなく、妊娠・出産を目指す方針となった。26歳時に1型糖尿病を発症しインスリン導入。28歳時に転居のため当院紹介。院内カンファンレンスを繰り返し行い、当院で不妊治療、糖尿病治療、妊娠出産管理、出生児の管理などを包括的に行う方針となった。1型糖尿病に対しては、インスリンポンプを導入した。不妊症に対しては、タイミング療法および排卵誘発を先行させたが妊娠に至らず、体外受精を開始。しかし、卵巣予備能の指標であるAMHは低値であり卵胞発育不全があった。治療開始半年後に採卵に成功した。採卵時には、感染性心内膜炎IEの予防と、抗血小板薬の休薬を行った。現在、血糖値の安定化を待って、移植の予定である。【考察・結語】1型糖尿病を合併したフォンタン患者の不妊治療を経験した。心疾患合併の不妊治療の際には、心不全の増悪や血栓症、IEなどに注意が必要で、特にフォンタン患者での報告は限定的であるため、それぞれの予防法を検討して対応することが重要である。