[P38-4] 当院における新生児の心筋トロポニンIの検討
Keywords:心筋TnI, 新生児, 測定意義
【背景】トロポニン複合体(トロポニンT・C・I)は、骨格筋と心筋の両者で横紋筋のアクチンとミオシン間のカルシウムを介した筋収縮の調節を行っている。心筋トロポニンT、I(以下、TnT, TnI)は90%以上が心筋細胞の構造フィラメント上に存在し、数%が心筋細胞の細胞質に存在する。可逆的な心筋障害の場合は心筋細胞の細胞質からトロポニンが微量に血中へ流出し、不可逆的な場合はトロポニンはフィラメント上から血中へ流出する。TnIの半減期は約2時間だが、腎排泄能の影響を受けるとされている。成人領域では虚血や心筋炎の診断、評価に用いるが、小児、新生児領域では確立された用途はない。【目的】新生児領域におけるTnIの測定意義について検討する。【方法】2020年2月から同年12月の間に当院で入院加療を要した新生児のうちTnIを測定した児を対象に後方視的研究を行った。検討項目は日齢、受胎後週数、体重、NT-proBNP、BUN、Cr、シスタチンC、CRP、原疾患である。TnI<0.0265ng/mlを基準値とした。【結果・考察】1)TnIは全体的に正常高値となり、日齢との間に緩やかな負の相関を認めた。腎排泄能がTnIの低下に関与することが示唆された。2)双胎児はTnIが高い傾向にあった。これは胎生期における心負荷の影響が示唆された。3)2例でTnIが陽性であった。症例1:MD twin第1子。第2子は死産。症例2:日齢1にPATとなり、フレカイニドで停止。いずれも、CRPを含む他の血液検査異常を認めず、心奇形なく心機能は良好であり、身体所見上も特記事項なく、経過観察とした。TnIは経時的に低下し生後半年ほどで正常化した。現在も外来経過観察中だが、約1年の経過で異常を認めていない。【結語】新生児期には出生直後の循環動態の急激な変化や腎排泄能が未熟なため、TnIの正常値が成人よりも高くなると考えられた。無症状なTnI軽度陽性例の長期予後に関しては今後の検討課題である。今後も症例数を増やし検討していく。