第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患

デジタルオーラルII(P39)
肺循環・肺高血圧・呼吸器疾患 1

指定討論者:加藤 太一(名古屋大学)
指定討論者:岩朝 徹(国立循環器病研究センター 小児循環器内科)

[P39-3] 特発性肺高血圧症に対する呼吸同調器付き在宅酸素投与の有効性の検討

福村 史哲, 馬場 志郎, 久米 英太朗, 松田 浩一, 赤木 健太郎, 武野 亨, 平田 拓也, 滝田 順子 (京都大学医学部附属病院 小児科)

キーワード:肺高血圧, 呼吸器同調器, 在宅酸素療法

在宅酸素療法は特発性肺高血圧症治療の一つであり、多くの患者が24時間酸素吸入を施行している。酸素ボンベの使用時間を延長するため呼吸同調器が開発されているが、小児患者においては通常呼吸での換気量が少なく同調機能が働きにくいことや吸入酸素濃度の不安定性から呼吸同調器の使用は多くない。今回、学童期の特発性肺高血圧症症例において呼吸器同調器付き酸素ボンベを使用することで心臓カテーテレウ検査における検査値の変化を検討した。症例は12歳の女性。運動後の顔面蒼白を契機に近医受診。精査目的に当院紹介となり、9歳時に特発性肺高血圧症と診断した。100% 酸素 3 L/分を経鼻カニュラ投与下で平均肺動脈圧は71 mmHg、肺血管抵抗は24 U・m2と高値であり、段階的にシルデナフィル・ボセンタン内服とエポプロステノールの持続点滴静注を開始増量した。経過中は平均肺動脈圧 45 mmHg、肺血管抵抗 7.0 U・m2と概ね安定していた。中学校入学にあたり在学中の酸素ボンベ使用時間の問題から、 中学校入学前から外出時や在学中のみ呼吸同調器付き酸素ボンベの使用を開始した。使用開始半年後の心臓カテーテル検査で、平均肺動脈圧は42 mmHg、肺血管抵抗は6 U・m2と増悪なく経過し、呼吸同調器付き酸素ボンベ使用は一定の安定した治療効果があると考えられた。感冒や鼻閉時などの使用は要注意であるが、呼吸同調器付き酸素ボンベ使用により、学校生活や登下校含めた長時間の使用に対してボンベ使用本数が減らせるメリットが大きいと思われる。特に校内の移動が大きくなる中学校や高校生活において、十分な精査の上で導入すれば患者のQOLを大きく改善する可能性があると考えられた。