[P39-5] 慢性肺疾患に伴う肺高血圧症と診断されていたが, 3歳時に片側肺静脈閉塞症が判明し, 動脈管閉鎖術時に患側肺動脈に肺出血予防のクリッピング術を施行した一例
Keywords:肺静脈閉塞症, 肺動脈低形成, 肺高血圧症
【背景】先天性肺静脈閉塞症や特発性肺静脈狭窄症は稀な疾患であり, 報告は散見されるものの治療に関し定見はない. 特に肺動脈系の低形成を伴う場合は外科的修復が困難であり, 喀血に対して責任血管の塞栓術の他, 肺切除も行われることがある. 今回, 動脈管開存を合併した片側肺静脈狭窄症に対し動脈管閉鎖術に併せて患側の肺動脈クリッピング術を施行し, 良好な経過を得た症例を経験したので報告する. 【症例】在胎34週0日, 1772g, Apgar score 2/2で出生後, 呼吸不全のため前医NICUに搬送となった. 動脈管開存はあるものの, 慢性肺疾患による肺高血圧症と診断され, 酸素や肺血管拡張薬の投与も行われたが, 肺高血圧の急性増悪を繰り返し治療に難渋していた. 3歳時に動脈管開存症に対する治療適応評価目的に当院に紹介となり, 左肺静脈閉塞症が明らかとなった. 心臓カテーテル検査において, FiO2 40%ではQp/Qs 1.3, Rp 5.9 単位・m2であったが, FiO2 100%ではQp/Qs 2.7, Rp 1.8 単位・m2と急性肺血管反応性試験は陽性であり動脈管閉鎖術の適応と判断した. 左肺血管床が著しく低形成であることから左側の外科的修復は断念した. 一方, 血管造影上左側の体肺側副血行路が目立たず動脈側の閉鎖も可能と判断し, 動脈管閉鎖術施行時に左肺動脈クリップ閉鎖術を施行した. 術後1年のカテーテル検査において, 肺高血圧はRp 3.5 単位・m2と軽快し, 左側の体肺側副血行路の発達もなく経過は良好である. 【考察】片側肺静脈閉塞症に対する患側肺動脈クリッピング術の報告はなく, 肺静脈閉塞の存在下に肺動脈側を閉塞することは体肺側副血行路の血流が多い場合, むしろ肺出血を惹起する可能性がある. しかし患側の肺血管床が乏しく側副血行路の発達もなければクリッピングにより肺循環から隔離することは肺出血を回避の手段として有用である可能性がある.