The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Digital Oral

川崎病・冠動脈・血管

デジタルオーラルII(P43)
川崎病・冠動脈・血管 1

指定討論者:三浦 大(東京都立小児総合医療センター)
指定討論者:神山 浩(ひろ小児科ファミリークリニック)

[P43-1] 川崎病急性期治療後の中期における転帰

中田 利正 (青森県立中央病院 小児科)

Keywords:Kawasaki disease, immunoglobulin, coronary artery lesions

【背景】川崎病(KD)急性期治療の違いによる中期予後の差異は不明である。【目的】当科で急性期治療を受けたKD患者の中期における転帰を明らかにすること。【方法】2009年1月~2020年5月までに当科で急性期治療をうけたKD214例を対象として、急性期からの臨床データ、2020年6月時点における転帰を後方視的に検討した。2009年からは、治療開始前に明らかな合併症を伴っていなかったKDに対しては、全例に2 g/kg初回単独免疫グロブリン療法(IVIG)終了後アスピリンを開始するプロトコール(delayed use of aspirin: DUA)を用いてきた。治療開始前に合併症を認めた5例を前合併症群、認めなかった209例のうち、DUAによるIVIGが施行された192例をDUA群、IVIGが施行されなかった17例を非IVIG群、と分類した。アスピリン代用薬としてフルルビプロフェンが投与された症例も対象に含めた。【結果】196例(92.1%)が初回単独IVIGを受けていた。1例は初診時に痙攣重積を合併し、初回IVIGにステロイドが併用された。IVIGが施行された197例のうち、不応例は21.8%、追加治療例は13.7%、再燃例3.0%で、治療開始後、敗血症、骨髄炎を含めた重症感染症や溶血性貧血、ショック合併例はなかった。発症から1カ月、1年後の冠動脈病変(CAL)合併率は、各々、1.9%、0.9%であった。前合併症群とDUA群の各々1例、計2例が発症から1年後にCALを残していた。冠動脈狭窄病変合併例はなかった。右巨大瘤を残した前合併症群の1例は初回治療前に中等度瘤を合併していた。DUA群の1例は右中等度瘤が残存した。中央値3年4カ月の経過観察中に、治療を必要とした心イベント発現例はなかった。【結論】治療開始前に合併症のないKDに対する急性期治療として、DUAによる初回単独IVIGは、治療後中期における冠動脈狭窄予防が可能で、安全性、医療経済的視点からも有益性があることが示唆された。