第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

川崎病・冠動脈・血管

デジタルオーラルII(P45)
川崎病・冠動脈・血管 3

指定討論者:梶野 浩樹(JA北海道厚生連 網走厚生病院)
指定討論者:星野 真介(滋賀医科大学)

[P45-2] 心肺停止蘇生後に左冠動脈の高度狭窄を認めた1例

渋谷 悠馬, 市川 泰広, 水野 雄太, 池川 健, 河合 駿, 小野 晋, 金 基成, 柳 貞光, 上田 秀明 (神奈川県立こども医療センター 循環器内科)

キーワード:冠動脈狭窄, 心肺停止, 血管炎

【症例】2歳4か月の男児。【現病歴】腹痛と意識消失を認めたため前々医を受診し、処置中に心肺停止となった。心肺蘇生開始35分後に心拍再開し、前医に搬送された。前医で行った造影CTで血管の多発狭窄・閉塞及び両側腎梗塞、左後頭葉の脳梗塞を認めた。また、心臓超音波検査でも心収縮の低下及び心電図上ST上昇を認めたため、精査・加療目的に当院に転院搬送された。【既往歴】1歳7か月時に川崎病と診断され、ガンマグロブリン投与を2回、インフリキシマブ投与の既往あり。発症2か月後の心臓超音波検査では明らかな冠動脈病変なし。【入院後経過】転院時、心血管作動薬使用下でFS 8.2%と心収縮低下を認め、心拍数190/分の心室頻拍を繰り返したため、開胸下にECMOを導入した。前医及び当院での心電図で胸部誘導での異常Q波およびST上昇を認め、心臓超音波検査で左冠動脈起始部に乱流を認めた。冠動脈精査・加療目的にECMO下に心臓カテーテル検査を施行した。左冠動脈主幹部の高度狭窄、多数の血管の狭窄及び閉塞を認めた。心肺停止、心機能低下の原因として冠動脈狭窄に伴う心筋虚血の可能性を考えたが、冠動脈病変に対する治療介入は困難と判断して、治療介入を断念した。入院3日目に瞳孔散大及び対光反射の消失を認めた。ご家族と相談し積極的な治療は行わない方針とし、入院5日目にECMOを離脱した。入院6日目に死亡した。【鑑別・考察】膠原病や血管炎の特異的マーカーはすべて陰性であった。止血・凝固系の明らかな異常も見られなかった。全エクソーム解析を施行したが本病態の原因と考えられるような遺伝子変異は検出されなかった。多発した血管狭窄及び閉塞を認めており、肉眼的な病理解剖所見からは頚部血管や冠動脈内腔の肥厚による狭小化を認めていた。血管炎に類似した変化の可能性が高いと考えられたが、原因は不明であり現在病理解剖の詳細な結果が待たれている。