The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Digital Oral

外科治療

デジタルオーラルII(P52)
外科治療 5

指定討論者:小谷 恭弘(岡山大学心臓血管外科)
指定討論者:宮本 隆司(新生会 児玉経堂病院)

[P52-1] 小児の縮窄を合併した腹部大動脈瘤の1例

近田 正英1, 北 翔太1, 宮入 剛1, 麻生 健太郎2, 桜井 研三2, 長田 洋資2 (1.聖マリアンナ医科大学 心臓血管外科, 2.聖マリアンナ医科大学 小児科)

Keywords:腹部大動脈瘤, 腹部大動脈縮窄, 長期予後

(はじめに)小児の腹部大動脈瘤は、外傷性や血管炎によるものがほとんどで先天性のものは極めてまれである。また腹部大動脈縮窄も比較的稀な疾患である。今回我々は、両者を合併し小児期に手術介入が行われ、14年後再手術を行った症例を経験したので報告する。(症例)17歳男性である。3歳時に気管支炎で入院した時、偶然腹部血管性雑音に気づかれた。精査の結果、腹部大動脈縮窄に腹部大動脈瘤を合併していた。腹部大動脈瘤の破裂の危険性があると判断し、縮窄部の切除を同時に行い、6mmゴアテックス人工血管で置換をした。病理組織診断で、動脈瘤は真正瘤であった。その後14年間にわたって外来で経過観察を行った。軽度の下肢の虚血症状があったが我慢できる範囲であり、下肢の発育障害が全く認められなかったので、成長が止まってからの手術の方針となっていた。今回17歳となり身長160cmでほぼ成長が止まったため、治療を受けることになった。術前のABIは両側0.64であった。術前の造影CTで下肢への側副血行は著明に発達していたが、人工血管前後の腹部大動脈は細いままであった。人工血管を再度置換する事は困難と判断し、extra-anatomical bypassの方針となった。若年者であり、腋窩―両側大腿動脈のバイパスは、長期開存性に問題があるため、下行大動脈―左外腸骨動脈バイパスの方針となった。Adamkiewicz動脈より末梢側で下行大動脈を遮断できると判断し、第9肋間開胸、後腹膜経由、単純遮断で下行大動脈から左外腸骨動脈にリング付ゴアテックス人工血管12mmでバイパス術を施行した。手術経過は特に問題なく、良好であった。術直後のABIはrt0.68 lt0.77となり、術後5か月後でrt0.91 lt0.88となった。下肢の軽度あった虚血症状は、消失した。非常に珍しい症例であり、小児期からの下肢虚血を長期に渡って観察しえたので、若干の文献的考察を加えて報告する。