The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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Digital Oral

外科治療

デジタルオーラルII(P52)
外科治療 5

指定討論者:小谷 恭弘(岡山大学心臓血管外科)
指定討論者:宮本 隆司(新生会 児玉経堂病院)

[P52-2] 大動脈壁内走行およびLMT狭窄を伴う左冠動脈起始異常に対しUnroofingとLMTパッチ形成術を行った1例

井本 浩1, 重久 喜哉1, 緒方 裕樹1, 松葉 智之2, 山下 雄史1, 藏元 慎也1, 立岡 修治1, 今田 涼2, 樋渡 啓生2 (1.鹿児島大学 心臓血管・消化器外科学, 2.鹿児島市立病院 心臓血管外科)

Keywords:冠動脈起始異常, 外科治療, 冠動脈パッチ形成術

【はじめに】左冠動脈起始異常、特にLCAが右バルサルバ洞から起始する症例は突然死の危険が高く手術が勧められている。しかし具体的な術式については言及がなく、冠動脈形態に応じた症例ごとの対応が必要となる。【症例】14歳男子。サッカーの試合中突然意識消失と全身の強直性けいれんを発症するも自然に回復。安静時および運動負荷心電図でも不整脈やST-Tの明らかな変化は認めなかった。心エコー、CT等により壁内走行を伴うLMTの異常が判明、同部での狭窄が疑われた。【手術】通常の体外循環下にまず電気的VfでMPAを切断、LMTの走行を確認し表面をLAD-CX分岐部まで剥離した。心停止後LMT起始部の10mm頭側で大動脈を切断した。LCAはRCA入口部に隣接して起始し壁内走行後、L-R交連のわずか上方を通って左バルサルバ洞に入ったところで大動脈壁から離れていた。壁内走行部分のUnroofingを慎重に行ったが、大動脈壁からのExitの部分は内径2mm未満であり術後の内膜肥厚も考慮すると狭窄解除が不十分と判断しLMTのパッチ形成を加えることにした。大動脈断端から垂直に切開を加えLMTに切り込んだ。準備していた肺動脈壁パッチは冠動脈に比し厚すぎると思われ、また奇静脈のパッチは脆弱で瘤化の懸念があったので、右下腿下部の大伏在静脈を採取してパッチに使用した。7-0モノフィラメント糸連続縫合で縫着、LMT起始部は4-5mmに拡大された。心停止からの立ち上がりおよびその後の経過は良好であり、術後CTでも狭窄を認めなかった。【まとめ】LCA壁内走行症例に対してはUnroofingが用いられることが多いが、Exit部分の狭窄や術後の内膜肥厚を考慮すると単独では不十分な場合もあると考えられ、そのような場合LMTパッチ形成は有効と思われる。狭窄の発生やパッチの瘤化に注意深い観察が必要と考える。