[P53-1] 小児心臓手術時の新鮮凍結血漿によるフィブリノゲン補充療法
Keywords:フィブリノゲン, 新鮮凍結血漿, 人工心肺
【背景】心臓手術時のフィブリノゲン(Fib)の重要性は、成人でも小児でもかわらない。一方、小児では人工心肺後の新鮮凍結血漿(FFP)の投与がかえって凝固障害を引き起こすことが指摘されており、クリオプレシピテートやFib製剤が第一選択となるが、すべての施設で使用できるわけではない。当院ではFib補充目的で人工心肺(CPB)復温時にFFPを投与しているが、その有効性、安全性を後方視的に検討した。【方法】2019年~2020年の間、CPB復温時にFFPを投与した症例を対象とした。【結果】60症例が対象となった。月齢(中央値 [四分位範囲])は13ヶ月 [7.8, 24]、体重は7.6 kg [6.0, 9.7]であった。CPB開始時のFibは81 mg/dL [67, 109]、FFP投与後は156 mg/dL [132, 181]であった。FFP投与量は3 kg未満で151 mL/kg、3~5 kgで80 mL/kg [69, 94]、5~10 kgで49 mL/kg [44, 55]、10~20 kgで30 mL/kg [19, 34]と低体重ほど大量投与となった(p<0.0001)が、投与後のFibは3 kg未満で155 mg/dL、3~5 kgで160 mg/dL [98, 198]、5~10 kgで161 mg/dL [134, 190]、10~20 kgで140 mg/dL [106, 174]と群間に差がなかった (p =0.30)。一方、FFP投与前後の血中カルシウム濃度は1.2 mmol/L [1.1, 1.2]から0.8 mmol/L [0.7, 0.9] (p<0.0001)、ACTは998 秒 [674, 1700]から461 秒 [402, 525] (p<0.0001)と低下した。【結語】復温時のFFP投与は適正にFib値を是正するが、低体重児ほど体重当たりのFFP必要量が大きいことが示された。またFFP投与時には低Ca血症とACTの変化に注意が必要である。