[P53-2] 小児開心術における拍動流体外循環の効果と妥当性
Keywords:拍動流体外循環, 心室中隔欠損症, 人工心肺
【背景】定常流体外循環は自己心臓による拍動と異なり非生理学的な循環であるが, 経験的に定常流であっても臓器灌流は維持することができ,大きな問題はないというのが一般的な考え方となっている. 拍動流は組織代謝などの点でその有用性が報告されているが,実際に導入している施設は少ない.我々は2011年より小児開心術において拍動流体外循環を導入している.【目的】小児開心術における拍動流体外循環の効果と妥当性について検討する.【方法】2011年2月から2021年1月までに当院において1歳以下の心室中隔欠損症に対し心内修復術を施行した72例を対象とした.人工肺前圧の比較的低いものは拍動流を使用,高いものは定常流を使用.定常流体外循環を行った31例をNP群,拍動流体外循環を行った41例をPP群とし比較検討を行った.検討項目は人工心肺中や離脱時の血液検査や術中尿量等を後方視的に検討した. 拍動流体外循環システムはテクノウッド(株)コンポーネントシステムIIIを使用し,全ての症例で常温体外循環を行った.【結果】NP群vs PP群で年齢 4.97±3.75 vs 3.95±3.40ヶ月,体重5.74±2.17 vs 6.71±2.19kg,人工心肺時間87.9±18.2 vs 93.6±19.9分と有意差なし.CPB中尿量/体重1.86±1.43 vs 3.75±3.66ml/kg (p<0.05)と有意にPP群で尿量が多く得られた.CPB中総バランス/体重は-45.1±34.7 vs -33.5±26.4ml/kgで有意差なし.CPB中メイロン使用量および離脱時の乳酸値に有意差なし.離脱後肉眼的溶血がみられたものはNP群6/31例PP群13/41とPP群にやや多い傾向がみられたが有意差なし.拍動流体外循環による回路トラブル等なし.【考察】拍動流体外循環は人工肺前回路圧が比較的低いものに対して安全に行うことができた.拍動流使用により体外循環中尿量の増加が得られる可能性が示唆された.