第57回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

デジタルオーラル

多領域

デジタルオーラルII(P55)
多領域 1

指定討論者:権守 礼美(認定NPO法人 シャインオンキッズ)
指定討論者:長野 美紀(国立循環器病研修センター 看護部)

[P55-4] 母親の育児不安に対する外来看護師の役割に関する一考察―受診時に母親の育児不安を察知し介入した事例を振り返ってー

文野 幸奈, 笹川 みちる (国立循環器病研究センター 看護部)

キーワード:先天性心疾患, 育児不安, 外来看護

【緒言】子どもをもつ家族は育児全般においての悩みを抱えていることが多く、外来は育児支援の役割が期待されている。外来受診時に母親の育児不安を察知し介入した事例を振り返り、外来看護師の役割について示唆を得たため報告する。発表において母親の承諾を得た。
【事例紹介】軽度肺動脈弁狭窄の6ヶ月女児とその母親。生後3週間で退院し、以降3か月に1回の外来経過観察中。
【看護の実際】退院後2回目の外来受診の際、母は処置室の扉を開けるや否や「検査で」とだけ話し、すぐに児を看護師に預けようとした。母の様子と児の低体重が気になり声をかけると「頑張って飲ませているのに大きくなってくれない」と涙ながらに思いを吐露された。児は他院で発達のフォローを受けていたが「もっと飲ませてと言われるだけ」「誰にも会いたくない」とふさぎ込んでおり、気持ちが楽になれるように一緒に考えることを伝えた。3回目の受診では、終診を考えていた主治医と育児支援としての継続した介入の必要性を共有し、カロリーアップを図ることの提案や発達面での多角的フォローアップが可能な医療施設を主治医と検討した。母親の同意を得て保健所へ情報提供すると母へ連絡がつかず心配されていたケースであったこともわかった。紹介先施設での入院を経て4回目受診時には児の体重増加が得られており、また地域での療育サポートも受けていることから、母は「頼れるところが見つかって安心した」と笑顔で話された。
【考察】心疾患の重症度や病状に限らず、母の状況からSOSの発信を察知し、適切な育児支援を受けられるよう調整できたことは、虐待やネグレクト予防に繋がったと考える。限られた時間の中でも心を開いてもらえるようなコミュニケーション能力と得られた情報から即座に看護の必要性を見出すアセスメント能力が、外来看護師には求められると考える。小児科経験のない看護師への教育方法の検討が今後の課題である。