The 57th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

Digital Oral

胎児心臓病学

デジタルオーラルII(P7)
胎児心臓病学 2

指定討論者:菱谷 隆(京都府立医科大学附属病院)
指定討論者:武井 黄太(長野県立こども病院)

[P7-2] 先天性右心耳瘤の一例

今西 梨菜, 岡 秀治, 中右 弘一, 東 寛 (旭川医科大学 小児科)

Keywords:RAAA, Ebstein病, 血栓塞栓症

【背景】右心耳瘤 (Right atrial appendage aneurysm; 以下、RAAA)は1968年にMorrowらによって初めて報告されて以来、新生児から成人を含め国内外で30例程度しか報告されていない稀な心内構造異常である。胎児期からの不整脈や出生後の血栓塞栓症、動悸や息切れといった症状が問題になる。【症例】在胎28週に前医で右房拡大を指摘され、当科に紹介された。胎児超音波検査で右房前方に心房と同期して収縮する低信号領域を認め、同部位は右房と交通し、血流も確認できた。入口部は広く、右房に沿って三角形の形態をしていた。また、三尖弁付着位置の異常やその他の構造異常を認めなかった。以上より、RAAAと診断した。胎児期に不整脈や血栓形成なく経過し、在胎39週6日に体重3335gで出生した。生後の経胸壁心臓超音波検査では、右房前方に1.2cm2の心耳瘤を認めた。入院中は不整脈や血栓形成を認めず、日齢5に退院した。現在外来で経過観察中である。【考察】先天性RAAAは右房の筋壁の形成不全が原因であると考えられている。Ebstein病などの右房拡大をきたす疾患と混同されることがある他、心嚢液貯留、三心房心などとも鑑別される。半数程度は診断時に無症状だが、不整脈や血栓塞栓症を合併することがあり、定期的な経過観察が必要である。無症状患者に対する管理について統一された見解は無いが、瘤の高度な拡大を認める例では血栓塞栓症の予防目的に抗血小板薬を導入する場合がある。また、有症状例や他の先天性心疾患の合併例、増大傾向を認める例では手術が考慮される。胎児期から新生児期に診断された他症例と比べて本症例の瘤の大きさは軽度から中等度と判断され、無投薬で経過観察の方針にした。【結論】先天性RAAAの一例を経験した。動悸などの症状や増大傾向、不整脈、血栓を認める場合には手術を含めた治療介入を検討していく。