[P7-3] 心外膜外側に拍動性病変を認め冠動脈走行異常との鑑別を要した心嚢水貯留の一例
Keywords:冠動脈瘻, 心嚢水, 胎児超音波検査
出生時から存在する冠動脈瘻は胎児循環からの離脱とともに心筋虚血が起こり早急な治療が必要となる。したがって冠動脈瘻が胎児期に同定された場合は心臓血管外科、新生児科含めて出生直後の治療・手術方針について検討すべきである。今回我々は、胎児心嚢水と冠動脈瘻の鑑別に苦慮し、出生後の対応について検討した症例を経験したので報告する。母体は33歳女性。4経妊2経産で自然妊娠となった。妊娠22週0日に羊水過少を認め、慢性早期剥離かつ羊水過少症候群を疑い妊娠22週6日から当院産婦人科に入院となった。在胎23週4日の胎児スクリーニング検査で右房右心室周囲に低輝度エコースペースをみとめ、ドップラーエコーでto-and fro血流様波形が同定された。同血流は心尖部で右心室内と交通している様にみえたため、巨大右冠動脈右心室瘻の疑いで当院産婦人科から小児循環器医へ紹介となった。在胎23週5日時点の胎児心エコーでは、四腔断面右心室外側に1.0-1.8mmの低輝度エコースペースを認め前検査と同様に血流様波形が記録された。しかしながら記録したエコー画像を詳細に検討すると、右心室外側壁と血管様腔との心拍同期性に乏しく右心室外側のスペースは心嚢水と判断した。記録された血流様波形は、右心室拍動に伴って心嚢水が移動した結果と考えた。母体の子宮収縮抑制が困難となり胎児徐脈が散発したため、在胎26週0日 胎児機能不全の診断で緊急帝王切開となった。出生後の心エコーで冠動脈に異常を認めず、右房右心室外側に心嚢水を軽度認めたが、その後の経過で自然に減少消失した。胎児期に心嚢水が多い症例では同腔のドップラーエコーで血流様波形が記録されることがある。冠動脈瘻との鑑別が必要なエコー画像であり出生後の対応も大きく違うため、注意すべき症例と考えた。