[I-ARSC-02] メディカルイラストレーターとの正しい付き合い方
Keywords:メディカルイラストレーター, 3DCG, VR教材
患者のCTやMRIのDICOMデータから3DCGが即構築されたり、内腔が即時に美しく色分けされたり、診断や手術シュミレーションなどに役立つシステムはさまざまな企業から開発されている。また、若手医師は大先輩の手術記録動画を見て学ぶことができ、わざわざイラストリッチな専門書を読んで学ぶ必要がない時代のようにも思える。もはやこの時代にメディカルイラストレーターなど不要ではと問われることも多い。CTやMRIが病院に設置され始めた70,80年代にも同じ現象が起こった。当時アメリカのジョンズ・ホプキンス大学ではメディカルイラストレーターの雇用を一時大幅に減らしたが、数年間のうちに再雇用されたという歴史がある。描く人間の目で見るからこそ気がつくこともあり、より効果的な構図を考えて制作するイラストレーションの技術は、画像技術がいくら発展しても消滅することはないと考える。メディカルイラストレーションは簡単即席に作れるポンチ絵ではなく、後世に残すべき技術や知識を伝承するためのものである。解剖図のトレースや内視鏡の視野をそのまま描き起こすのがメディカルイラストレーターではなく、医学研究と日々向き合い、効果的な見せ方、伝え方の提案ができてこそプロと言える。実際、医師や研究者の論文が広く読んでもらえることは専門家としての評価につながり、世界的な潮流として論文のビジュアルは非常に重要視されはじめている。また、コロナ後急速に広がりを見せているARやVR教材において、平面のメディカルイラストレーションは一見関係がないように思える。しかし、3次元立体物として解剖学や手術手技を見せるためには、アウトプットの形が異なるだけで、メディカルイラストレーターの解剖学の理解や高度な空間描写の技術が必要不可欠である。ではメディカルイラストレーターとともに良いビジュアルを作るにはどういった条件が必要であるか、実例を交え日本の現状とともに報告する。