[I-OR01-02] 胎児診断率向上のための新たな取り組み-Raise to 80 project-
Keywords:先天性心疾患, 胎児診断率, 胎児心臓超音波検査
【背景】先天性心疾患の胎児診断率は向上しているが、疾患毎に大きな隔たりがある。長野県では重症心疾患の胎児診断率は約60%と十分ではなく、左心低形成症候群、完全大血管転位症、大動脈縮窄症、総肺静脈還流異常症の胎児診断率は、100%, 68%, 29%,15%と疾患毎に大きな差がある。胎児診断率のさらなる向上のためには、地域産科施設の超音波技師、産科医師のスクリーニング力の底上げが不可欠だが、検査者は多施設に所属しており、地域全体の診断技術向上には新たな教育、スクリーニングシステムの導入が必要と思われる。今回、長野県における胎児診断の困難な心疾患の胎児診断率を80%以上に改善することを目的に、新たな胎児診断の教育、診断システムを構築し、その有効性を検証することとした。【方法】2021年10月から、胎児心臓超音波検査法の技術向上と胎児診断率の改善を目的とした会員制のウェブサイトを設立した。対象は長野県の胎児先天性心疾患のスクリーニングに携わる超音波技師、産科医師、小児循環器科医とした。会員はウェブサイトにおいて (1)診療で判断に迷った症例を、安全性を担保したサーバーを用いてデータをアップロードし相談が可能、(2)胎児心臓超音波スクリーニングの方法、先天性心疾患の代表的な超音波画像を学習できるビデオライブラリーを利用、(3) 胎児先天性心疾患の心臓超音波診断法に関して一般的な質問ができる Q and A サイトを利用することができる。また、症例相談の結果、心疾患が疑われる症例は、長野県立こども病院での胎児心エコー精査へ繋げることとする(当院倫理委員会承認済み)。【今後の研究の予定】本プロジェクトは長野県循環器病対策推進基本計画に組み込まれ、県の推進事業として展開していく予定である。システム導入後、長野県における先天性心疾患の胎児診断率の変化と予後に与える影響を追跡調査し、その有効性を評価する。