[I-OR02-03] 成長とともに呼吸障害が出現した新生児Marfan症候群の2症例
キーワード:新生児Marfan症候群, FBN-1遺伝子, 気管・気管支軟化
【背景】Marfan症候群(以下MFS)は全身の結合組織の異常をきたす常染色体優性遺伝の疾患であり、その原因遺伝子としてFBN-1遺伝子が知られている。その中でもExon24-32番における変異は重症かつ早期発症の新生児Marfan症候群(以下nMFS)を呈する。nMFSの心血管系の症状はよく知られているが、呼吸器系の症状についてはよく知られていない。今回、気道症状を呈したnMFSの2症例を経験したので報告する。【症例1】9歳女児。在胎35週に大動脈及び肺動脈の拡大を指摘された。右小指の屈曲と伸展障害、高身長の家族歴よりMarfan類縁疾患が疑われた。遺伝子検査でFBN-1遺伝子変異(c.3095G>A)を認めnMFSと診断された。2歳時に僧帽弁閉鎖不全(以下MR)に対し僧帽弁形成術を施行した。3歳時には側弯の進行による呼吸障害が出現し、在宅非侵襲的陽圧換気療法(以下NPPV)導入となった。9歳時点で、抗心不全療法・在宅NPPV継続中。側弯に対し体幹部のコルセットを導入。車いす中心の生活で、肢体不自由級に通学している。【症例2】13歳男児。出生後MR、長い四肢・手指・足趾、Steinberg sign, Wrist signがありMFSが疑われた。遺伝子検査でFBN-1遺伝子変異(c.3661T>C)を認めnMFSと診断された。1歳時にMRに対し僧帽弁置換術を施行した。9歳時に繰り返す気胸に対し胸腔鏡下左肺部分切除術を施行した。術後に気管軟化による換気不全となり低酸素性虚血性脳症をきたした。その後気管切開術を施行した。10歳時に気道閉塞による低酸素血症、ショックとなり2日間体外式膜型人工肺(以下ECMO)を施行。腕頭動脈による気管の圧排、気管と左主気管支に軟化症を認め、気管外ステント留置術を施行した。13歳時に自宅で気管攣縮による呼吸原性心停止。蘇生施行も心拍再開せず死亡した。【考察】nMFSでは、学童期に側弯の進行や気管・気管支の軟化による呼吸障害が顕在化することがあり、NPPVの導入や呼吸原性の心停止の可能性を考慮する必要がある。