[I-OR05-01] 生後早期に高度心不全を呈した大動脈無冠尖欠損による先天性大動脈弁逆流の1例
キーワード:先天性大動脈弁逆流, 無冠尖欠損, 新生児心不全
【緒言】大動脈弁狭窄を伴わない先天性大動脈弁逆流は稀である.高度大動脈弁逆流と心室中隔欠損として胎児期から観察し,生後早期に心不全をきたし循環管理に難渋した大動脈無冠尖欠損による先天性大動脈弁逆流の1例を経験したので報告する.【症例】妊娠27週の胎児心エコーで大動脈弁逆流,心室中隔欠損と診断.34週にかけて心拡大増悪,心嚢液貯留が見られた.大動脈弁逆流は高度で大動脈弁は2尖弁様に見えたが詳細な観察は困難であった.胎児水腫には至らず35週6日自然経腟分娩で出生.出生後の心エコーでは大動脈弁は3尖様で,無冠尖に当たる部位が欠損し,そこから高度の逆流を呈していた.心室中隔欠損,動脈管開存を合併し,大動脈弁逆流は心室中隔欠損を介して右室へ吹き込んでいた.日齢2より高肺血流による心不全徴候が出現し血圧低下があり,窒素ガスによる低酸素換気療法を始めとする心不全管理を開始した.手術の方針として大動脈弁の形成を考慮したが,形成不可の場合は大動脈弁を閉鎖せざるを得ない可能性も考え,動脈管が閉鎖傾向となった時点でプロスタグランジン製剤の使用を試みたが,血行動態がさらに不安定となり継続できなかった.日齢7に自己心膜による大動脈弁形成術および心室中隔欠損閉鎖術を行い大動脈弁逆流の制御に成功し術後経過は良好であった.術中所見で大動脈無冠尖の欠損と診断した.【考察】大動脈弁の弁尖の欠損は極めて稀で,その中では右冠尖欠損の報告が散見される.弁尖が小さく退縮した症例や,線維束が欠損部を補完している症例の報告があるが,本症例では無冠尖の欠損部に構造物は認めなかった.本症例では心室中隔欠損も合併し生後早期に高度心不全を呈した.【結論】胎児期より大動脈弁逆流と心室中隔欠損として経過観察し,出生後の心エコー及び術中所見より無冠尖の欠損と診断,一期的修復術を行った先天性大動脈弁逆流の1例を経験した.