[I-OR05-03] BDG/TCPS術後における肺動静脈瘻形成に関する検討
Keywords:肺動静脈瘻, hepatic factor, グレン手術
【背景】単心室治療の経過で形成されうる肺動静脈瘻(PAVF)は、チアノーゼの原因として重要である。Hepatic factorの欠乏が関与するといわれているが、その機序は不明な点が多い。【目的】BDG(G)/TCPS(T)術後からFontan型手術(F術)前に形成されるPAVFの特徴を明らかにする。【方法】2014年1月~2022年1月の間でG/T術を経てF術が施行された96例について、PAVF形成の有無・タイミング・関与する要素などにつき後方視的に検討した。【結果】96例中15例でG/T術後F術前にPAVFの形成を認めた(うち、コントラストエコー・肺動脈造影による確定例9、F術前CT・周術期経過による疑診例6)。診断の内訳は、HLHS 8、Polysplenia/HLHS 2、TA 2、Polysplenia/SV 1、PA/IVS 1、l-TGA/hypo LV 1。Polyspleniaでは5例中3例(うち2例がT術後)と高率にPAVFを認めたのに対し、Aspleniaでは8例いずれもPAVFを形成しなかった。Additional pulmonary flow付きのG/T循環とした症例は32例、しかし、その中からもPAVFを形成する症例があった。推定されるPAVFの原因は、1.G/T循環の長期化(9例)、2.SVC flowとadditional pulmonary flowとの競合(6例)、に大別され、G/T術からPAVF診断までの経過年数はそれぞれ2.9±1.8年、1.3±0.4年と、2.で優位に早期に形成されていた (p<0.03)。なお、PAVFを形成しなかった82例の、G/T術からF術までの経過年数は1.7±1.4年であった。1.や2.と同等の条件を満たしてもPAVFを形成しない症例があり、それらはPVO、側開胸手術歴、創部感染歴といった体肺側副動脈の増生を惹起する条件を満たす傾向にあった。【結語】PolyspleniaはT術の適応となることが多くPAVFを形成しやすい。Additional pulmonary flowによるhepatic factorの誘導を企図しても、SVC flowとの競合で逆により早期にPAVFを形成する恐れがあるため、手術デザインには注意を要する。PAVFリスクの高い症例では、F術までの期間を短くする管理が必要である。