[I-OR06-02] 小児がん生存者における左室ストレインの経時的変化 - pilot studyの報告 -
Keywords:小児がん生存者, 化学療法, 左室ストレイン
【背景】小児がん生存者において、アントラサイクリン系薬剤による心毒性は心機能低下により生命予後に影響を与え、心不全発症や心血管イベント発症率が治療終了後も増加し続けるが、経時的な心機能の低下様式は不明である。【目的】アントラサイクリンを含む化学療法を受けた小児がん生存者における心機能の経時的な変化を検討すること。【方法】対象は、当院でアントラサイクリン系抗癌剤を用いた化学療法を行い、治療終了後1年以上経過した時点で初回心機能評価を行い、初回計測からに2年以上経過した時点で心機能の再評価を行った小児がん生存者の20例。心機能評価は心臓超音波検査を用い、左室の心基部及び乳頭筋部の円周方向ストレイン(BCS及びPCS)と長軸方向ストレイン(LS)を計測した。116例の正常対照群のデータから年齢に対する平均値及び95%信頼区間を算出し、各計測値を正常値の% of normalに換算した。アントラサイクリン系抗がん剤の投与量が200mg/m2以上と以下の群に分類し、初回の計測と最後の計測において各群の比較検討を行った。【結果】化学療法開始年齢は6.5 ± 4.2歳、初回心エコー施行時年齢平均11.6 ± 4.8歳、最終心エコー施行時平均年齢 16.1± 4.8歳であった。LVEFは1例のみが、e’は3例が、LSは6例が、BCSは5例が95%信頼区間より低下した。LSはアントラサイクリン200mg以上投与群のLSの最後の計測において、200mg以下投与群よりも有意に低下していた(p = 0.009)。アントラサイクリン投与量と、LS最終計測及び初回からの低下率が相関した(それぞれ、r = -0.676, p = 0.002及びr = -0.437, p = 0.041)。【結論】アントラサイクリン系薬剤投与量と比例して、経時的に長軸方向ストレインが低下する可能性が示唆された。そのため継続する心機能評価が重要である。