[I-OR06-04] 小児拘束型心筋症における左房ストレイン及び機能評価の有用性
キーワード:左房機能, 拘束型心筋症, 心不全
【背景】小児拘束型心筋症(RCM)は、重篤で稀な疾患で発症時期や病状の進行は多様であり、病状把握に苦慮する。成人心不全の病態把握や心事故予測に左房ストレインが有効であると報告されている。小児RCMに対する同樣の報告は少ない。【目的】左房ストレイン及び機能評価がRCMの病態把握に有効であるか検討する。【方法】RCM17例の連続51件と 正常心10件の心エコーデータを、TTA2.40 (Tom Tec社)にて解析した。同時期に施行した33件の心カテデータを比較検討した。観察期間は当院初診時からVAD装着または心移植実施までとした。【結果】RCM17例(年齢7才(6-9.5))、正常心10例(年齢6才(2.5-11.5))。心移植到達は9例、その内VAD装着は3例、死亡は1例。観察期間は13ヶ月(2-24) 。最大左房容積(LAVi)はRCMで有位に高値(75 (52-102) vs 26 (13-32)ml/m3, p<0.0001)、左房拡張ストレイン(LA-Sr)、収縮ストレイン(LA-Sc)はRCMで有位に低値であった(19.7±11 vs 49.7±16.2%, p=0.0001, 16.4±7.1 vs 8.8±7.6, p=0.01)。LA-SrとLAViは優位な相関を認めた(r=0.6, p<0.0001)。LA-SrとLA-ScはPVRI (2.5 (1.4-4.1) unit/m2)と有位に相関したが(r=0.5 (p=0.004), r=0.5 (p=0.003))、LVEDP(23 (18-27) mmHg)とPCWP(17 (12-21)mmHg)とは相関しなかった。ROC解析の結果、心不全増悪による移植登録予測のLA-Srのカットオフ値は20.5(感度0.913, 特異度0.75; AUC 0.81)。初診時にLA-Srが20%以上の症例は7症例 (41%)、その内1症例が観察36ヶ月時に20%以下になり移植登録に至った。初診時にLA-Srが20%以下の症例は、治療強化に関わらずLA機能の改善は乏しく、全例心移植登録もしくは実施に至っていた。【考察】左房ストレインは、RCMの病態を評価するのに有用であることが示唆された。RCMの病態を把握するには、心カテで得られるLVEDPやPCWPのみでは困難であり、左室拡張障害の影響直接的にうける左房機能を評価することが重要である。