[I-P1-2-02] 小児がん患者におけるがん関連心機能障害(CTRCD)早期発見のための画像診断-初回治療前後のGlobal Longitudinal Strain(GLS)変化-
キーワード:CTRCD, GLS, Speckle tracking法
【背景】スペックルトラッキング法によるGlobal Longitudinal Strain(GLS)はEFよりも鋭敏に心機能障害を検出する指標として知られ、成人のがん関連心機能障害(CTRCD)ガイドラインでは、EF≦53%、治療前からのEF低下≧10%ポイントに加えて、治療前からのGLS絶対値の低下率>15%も心保護薬開始を検討する指標の一つとされている。当院では2020年10月以降抗がん剤治療を行う全患者に対して治療開始前、初回治療後にGLSを評価し、心エコー再検の時期や循環器科受診の有無を決定している。【目的】小児がん患者の GLSを初回治療前後で評価しその変化について検討する。【方法】2020年10月~2021年8月に初発のがん治療を開始した小児を対象に、治療前・初回治療終了時のEF・GLSを評価し、後方視的に比較した。GLSはPhilips社のEPIQ7による心尖からの左室三断面を用い、同社解析ソフトISCV、AutoSTRAINにより一名の医師が解析した。【結果】対象患者8例。年齢中央値53 (9-139)か月。男7例。血液がん5例。アントラサイクリン系抗がん剤投与7例。ドキソルビシン(DXR)換算累積投与量中央122(60-375)mg/ m2。心筋障害の中リスクとされるDXR換算累積投与量>200mg/m22例。EF平均値は治療開始前67±4%、治療後67±3%で差はなく、EF≦53%や治療前からのEF低下≧10%ポイントの基準を満たした症例はいなかった。全例でGLS計測が可能で、GLS平均値は治療開始前-23.3±1.8%、治療後-22.4±1.5%で有意差はなかった(p=0.289) 。DXR換算累積投与量100mg/ m2の1例でGLSが治療前後で-27.2%から-21.9%(低下率19.5%)に低下を認めたが、抗心不全治療は行っていない。【結語】小児CTRCD早期発見のため抗がん剤治療を行う全症例でGLS測定を開始し低下傾向となる症例を認めた。GLS計測は簡便で、長期に評価を継続することが可能な臨床上重要な評価項目であるが、抗心不全治療開始の判断はさらなる症例の蓄積が必要と考えられた。