第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

自律神経・神経体液因子・心肺機能

ポスター発表(I-P1-5)
自律神経・神経体液因子・心肺機能

2022年7月21日(木) 14:00 〜 15:00 ポスター会場

座長:畑 忠善(藤田医科大学ばんたね病院 臨床検査部)
座長:南沢 享(東京慈恵会医科大学 細胞生理学講座)

[I-P1-5-02] Fallot四徴症後遠隔期症例における、運動負荷試験を用いた右心不全の新たな評価法の開発

古道 一樹1,2, 淺野 聡1, 湯浅 絵理佳1, 井上 忠1, 山本 一希1, 吉田 祐1,2, 住友 直文1, 石崎 怜奈1,2, 小柳 喬幸1, 徳村 光昭2,3, 山岸 敬幸1,2 (1.慶應義塾大学医学部小児科学教室, 2.慶應義塾大学スポーツ医学総合センター, 3.慶應義塾大学保健管理センター)

キーワード:RVEDVi, 左室拡張能, CPX

【背景】近年、Fallot四徴症(TOF)の右室流出路に残存する肺動脈弁閉鎖不全が原因となる、遠隔期右心不全が大きな問題となっている。運動負荷試験は心不全に関連した運動耐容能の鋭敏な指標となるが、従来は左心不全評価に用いられ、右心不全評価指標は未だ確立されていない。【目的】運動負荷試験を用いた、TOF遠隔期の右心不全評価に有用な指標の確立を試みた。【方法】対象は2016-2021に当院スポーツ医学総合センターを受診した15歳以上のTOF 22例で、同時期に心臓MRI、経胸壁心臓超音波と自転車エルゴメーターを用いた運動負荷試験を実施し、パラメーターの相関性を検討した。【結果】運動負荷試験において、全症例で心拍応答は正常範囲に保たれていたが、酸素脈は早期にプラトーに達する異常パターンを示した。心拍応答と酸素消費量の関係を解析するため、年齢・性別をもとに標準化した心拍数、酸素消費量を用いて酸素脈の逆数HR/VO2をプロットし、酸素消費量上昇に対し心拍応答率が急激に増加する変曲点をdeflection point(DP)と定めた。運動負荷試験の各指標と心臓MRI、経胸壁心臓超音波のデータとの相関を解析したところ、DPを超えた後のslopeを示すΔHR/ΔVO2(ΔHR/ΔVO2>DP)は、RVEDVi≧160の症例で有意に高値を示した[1.06 (RVEDVi≧160) v.s. 0.78 (RVEDVi<160), p=0.0096] 。さらに、ΔHR/ΔVO2>DPは左室拡張能低下症例で有意に高値を示した[1.00 (E/A≧2.0 or E/e’≧15.0) v.s. 0.76 (E/A<2.0 and E/e’<15.0), p=0.0064]。ΔHR/ΔVO2>DPカットオフ値0.88と定めた場合、RVEDVi≧160の推定精度は感度78%、特異度70%であった(AUC 0.82)。【考察】これらの結果は、TOF術後遠隔期において、ΔHR/ΔVO2>DPが右室拡大とそれに伴う左室拡張能低下の鋭敏な指標となることを示唆する。【結論】TOF術後遠隔期の右心不全評価において、運動負荷試験を用いたΔHR/ΔVO2>DP測定は有用である。