[I-P1-7-08] SGLT-2阻害薬で浮腫の改善と体重減少が得られた成人Fontanの一例
キーワード:SGLT2阻害薬, Fontan, 成人先天性心疾患
背景:SGLT-2阻害薬は糖尿病治療薬であるが心不全患者における体重やBNPを低下させる効果を有し、入院や心血管リスクを下げる大規模研究試験が次々と報告されている。今回我々はDapagliflozinを導入し浮腫の軽減と体重減少が得られたFontan手術後の成人症例を経験したため報告する。症例:41歳男性診断:三尖弁閉鎖手術歴:10歳時にFontan手術、37歳時にFenestrated TCPC conversion患者背景:NYHA 心機能分類 2度 事務職で週5日勤務Fontan手術から30年が経過し肝脾腫、下腿の浮腫が強く静脈鬱滞による静脈内血栓症の既往あり。アゾセミド 120 mg、スピロノラクトン 200 mgとトリクロロメチアジド 1 mgを内服している。TCPC conversion後1年の心臓カテーテル検査では中心静脈圧は12 mmHg、LVEF 67 %であった。経過:35歳から2型糖尿病を発症し血糖降下薬を内服中であったがHbA1cが上昇し10.3 %まで悪化した。新たな血糖降下薬を導入する方針とし、入院管理でDapagliflozin 5mgの内服を開始した。内服開始から尿量が著増し最大7200 ml/dayまで増加したが、心拍数は70から100 bpm、収縮期血圧は100から110 mmHgと安定し脱水所見も認めなかった。徐々に下腿浮腫は軽減し、体重は60kgから55kgまで減少した。導入前後でのCreは 0.58→0.61 mg/dlと変化は認めなかった。利尿剤はサイアザイドの内服を中止した。Dapagliflozin導入後も血糖値の低下が得られずインスリン自己注射を併用した。退院後も失神やふらつきを認めることなく日常生活を送ることができ、HbA1cも7.2%まで改善した。Dapagliflozin導入半年後に行った心臓カテーテル検査では中心静脈圧は11 mmHg、LVEF 67 %であった。結語:Fontan症例においてもSGLT -2阻害薬は体液貯留による浮腫を軽減し、長期予後の改善につながる可能性がある。内服開始直後に尿量増加を認めたが、入院の上で水分管理と血糖評価を行えば安全な導入が可能であった。