第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

成人先天性心疾患

ポスター発表(I-P1-7)
成人先天性心疾患 I

2022年7月21日(木) 14:00 〜 15:00 ポスター会場

座長:坂崎 尚徳(兵庫県立尼崎総合医療センター 小児循環器内科)
座長:豊野 学朋(秋田大学大学院医学系研究科 小児科学講)

[I-P1-7-10] Fontan手術後妊娠と出血性合併症 ー絨毛膜下血腫と危機的産科出血をきたした1症例2妊娠からの考察ー

三浦 文武1, 相馬 香奈1, 鎌田 槙1, 佐々木 都寛1, 橋本 礼佳3, 小山石 隼3, 嶋田 淳1, 北川 陽介1, 金城 学3, 大谷 勝記1, 高橋 徹2 (1.弘前大学医学部附属病院 小児科, 2.弘前大学大学院保健学研究科, 3.八戸市立市民病院 小児科)

キーワード:Fontan, 妊娠, 凝固

Fontan手術後妊娠分娩の報告はまだ少なく、母子の臨床経過も不明な点が多い。Fontan手術後に加え、Fontan手術後妊娠の周産期抗凝固療法にも一定の見解がない。症例は三尖弁閉鎖、大血管転位で8歳時にFontan循環が成立した女性。Fontan手術の術後経過中に多発性脳梗塞の合併症を呈した。27歳時に自然妊娠した。Fontan手術後妊娠に加え、脳梗塞後妊娠であったためアスピリンとワルファリンまたはヘパリン持続点滴による抗凝固療法を行っていた。妊娠8週に絨毛膜下血腫を認め、持続した。妊娠27週に胎児貧血と診断され、緊急帝王切開で1050gの男児を分娩した。児は胎児母体間輸血症候群を発症した。母体は術後約7時間で抗凝固を再開したが急激に腹壁血腫を認め危機的産科出血もきたし、緊急腹壁血腫除去術を要した。後の胎盤病理で胎盤の慢性的な循環不全を示唆する所見が得られた。その4年後、再度自然妊娠した。前回と同様の抗凝固療法を行った。妊娠11週から再度絨毛膜下血腫を認め、持続した。妊娠18週に子宮内胎児死亡となった。近年増加している先天性心疾患合併妊娠の主な周産期合併症の一つとして分娩後出血があり、Fontan手術後妊娠に特に多いとされている。また妊娠初期の抗血小板薬投与は絨毛膜下血腫のリスクを増加させるという報告もある。Fontan手術後妊娠では血栓性合併症だけでなく、周産期を通じての出血性合併症に注意が必要である。