第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

複雑心奇形

ポスター発表(I-P2-2)
複雑心奇形 I

2022年7月21日(木) 15:10 〜 16:10 ポスター会場

座長:村上 卓(筑波大学 小児科)
座長:葭葉 茂樹(埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科)

[I-P2-2-03] 肺静脈狭窄を合併した無脾症・総肺静脈還流異常症の治療変遷と予後 ‐患者さんと歩む33年のチャレンジ‐

渡辺 まみ江1, 宗内 淳1, 杉谷 雄一郎1, 江崎 大起1, 小林 優1, 山田 洸夢1, 富田 宣孝1, 落合 由恵2, 城尾 邦彦2 (1.JCHO九州病院 循環器小児科, 2.JCHO九州病院 心臓血管外科)

キーワード:無脾症, 総肺静脈還流異常, 肺静脈狭窄

【背景と目的】肺静脈狭窄(PVO)を伴う総肺静脈還流異常症(TAPVC)の多くは、早期治療介入を余儀なくされる. 無脾症合併の場合、多くが機能的単心室で、姑息的治療時の肺血流調整にはしばしば難渋し、現在でも予後不良の疾患群である. 当院での治療変遷と予後を検討した. 【方法】1974‐2022年に経験した全無脾症78例中、PVOを伴うTAPVCを合併した17例について、1)診断 2)初回治療介入の時期と方法 3)治療 4)予後を後方視的に検討した. 【結果】1)男11,女6、心室形態は単心室12,AVSD 5、PA 4,PS 8、TAPVCはI型10,II型1,III型6、11例が両側SVC. 2)心疾患に治療介入できたのは13例で、時期はday1-3か月(中央値 day15)、外科手術9 (TAPVC修復 4,TAPVC修復+PAB 2,TAPVC修復+shunt 2, SAF+PAB 1)、2017年以降は初回治療としてステント留置(STI)を4例に行った.治療介入していない4は、敗血症1,初期にday1で失った1の他、自然歴で4か月, 11カ月まで生存した2例. 3)17名に外科手術をのべ18回(乳児期手術9はBCPS 3,TCPC 2,CAVVP 1,CAVVR 1,PVO再解除1,TAPVC修復1)カテーテル治療は11回(STI 7, ST再拡張 3, BAP 1)行った。厳しい予後を伝えてもご家族の手術希望が強かった症例を契機に、積極的に手術を行ってきた経緯がある. 4) 生存は現在day40(STI), 4才(BCPS到達),12才(TCPC到達)の3例で、退院・在宅移行できた6を含む14例を失った.死亡時はday1-2y9moで、初回術後の周術期死亡6,自然歴3,感染3, 突然死の2例にはFontanに到達した2才男児が含まれる.【考察】年代による変遷はあるが本疾患群の予後は現在でも厳しい.肺血管の悪条件により、多くが初回姑息術時の肺血流コントロールに難渋するが、術前のステント治療によりその改善を期待できる.無脾症を背景に感染症や不整脈リスクも併せ持ち、実際の予後向上には、まだまだ課題も多く、循環器小児科、心臓外科の協働が必須である.