[I-P2-5-01] 虐待による外傷性心室中隔穿孔・左右冠動脈損傷症例の心機能経過
Keywords:鈍的心臓外傷, 心機能, 冠動脈損傷
【緒言】胸部外傷後の心臓破裂や冠動脈損傷は大変稀であり、多くは交通外傷に伴うものである。今回我々は、実父の虐待から外傷性心室中隔穿孔・左右冠動脈損傷を来し、術後も心機能低下が遷延した症例を経験したので報告する。
【症例】症例は5歳男児。嘔吐・腹痛を訴え前医受診した際に、収縮期雑音と三尖弁逆流、逸脱酵素の著明な上昇、心電図上のST変化を認めた。また、顔面・体幹部に複数の打撲痕を認め、多発外傷と偶然併発した急性心筋炎の疑いで当院へ転院搬送となった。来院時の心電図検査ではV2-V4誘導に限局したST上昇があり、心臓超音波検査では右心室優位の心機能低下を認めた。また、径7mmの心尖部心室中隔欠損と心尖部心室瘤を認め、収縮期雑音は同部位の左右短絡の雑音と判明した。同日児童相談所より父親からの虐待事例である情報提供があり、外傷性の心室中隔穿孔、心室瘤と診断。入院後、両親と隔離し、酸素投与、ドブタミン、利尿薬投与による循環管理を開始したが、心室中隔欠損が 7mm程度にもかかわらず心筋収縮低下が遷延したため、入院4日目に心臓カテーテル検査を施行した。左冠動脈後側壁枝末梢部分の損傷途絶、右冠動脈後下行枝の広範囲の損傷と右冠動脈右室瘻を認めた。持続鎮静、PDE3阻害剤の投与を追加するも低心拍出所見が遷延し、心拡大と肺うっ血が進行した。外科的治療が必要と判断し、入院14日目に心室中隔欠損孔閉鎖および心室瘤切除術を施行。術後、全身状態は改善傾向にあったが、両心機能低下が残存したため、慢性心不全として利尿薬としてフロセミド内服を継続、心保護薬としてスピロノラクトンを導入した。退院後の心臓超音波検査では、心機能低下は遷延するものの徐々に改善傾向となっている。
【結語】胸部外傷後の患者には心臓病変を合併しうるため、心電図検査、心臓超音波検査で評価を行う。また、治療抵抗性の心機能低下を認める場合、冠動脈病変を念頭に置く必要がある。
【症例】症例は5歳男児。嘔吐・腹痛を訴え前医受診した際に、収縮期雑音と三尖弁逆流、逸脱酵素の著明な上昇、心電図上のST変化を認めた。また、顔面・体幹部に複数の打撲痕を認め、多発外傷と偶然併発した急性心筋炎の疑いで当院へ転院搬送となった。来院時の心電図検査ではV2-V4誘導に限局したST上昇があり、心臓超音波検査では右心室優位の心機能低下を認めた。また、径7mmの心尖部心室中隔欠損と心尖部心室瘤を認め、収縮期雑音は同部位の左右短絡の雑音と判明した。同日児童相談所より父親からの虐待事例である情報提供があり、外傷性の心室中隔穿孔、心室瘤と診断。入院後、両親と隔離し、酸素投与、ドブタミン、利尿薬投与による循環管理を開始したが、心室中隔欠損が 7mm程度にもかかわらず心筋収縮低下が遷延したため、入院4日目に心臓カテーテル検査を施行した。左冠動脈後側壁枝末梢部分の損傷途絶、右冠動脈後下行枝の広範囲の損傷と右冠動脈右室瘻を認めた。持続鎮静、PDE3阻害剤の投与を追加するも低心拍出所見が遷延し、心拡大と肺うっ血が進行した。外科的治療が必要と判断し、入院14日目に心室中隔欠損孔閉鎖および心室瘤切除術を施行。術後、全身状態は改善傾向にあったが、両心機能低下が残存したため、慢性心不全として利尿薬としてフロセミド内服を継続、心保護薬としてスピロノラクトンを導入した。退院後の心臓超音波検査では、心機能低下は遷延するものの徐々に改善傾向となっている。
【結語】胸部外傷後の患者には心臓病変を合併しうるため、心電図検査、心臓超音波検査で評価を行う。また、治療抵抗性の心機能低下を認める場合、冠動脈病変を念頭に置く必要がある。