[I-P2-7-08] 左房食道瘻を原因とする敗血症性ショックをきたした5p欠失症候群の1症例
Keywords:左房食道瘻, 5p欠失症候群, 敗血症
【はじめに】左房食道瘻 (AEF: Atrioesophageal fistula)はカテーテルアブレーション (CA)後の合併率0.1%以下の致死的合併症としてのみ報告されている。CA治療歴のない左房食道瘻は、現在まで国内外で報告はない。CA治療歴を有さず、敗血症性ショックで死亡し、剖検でAEFが明らかとなった5p欠失症候群の1症例を経験したので報告する。【症例】5p欠失症候群、VSD、ASDと診断され、1歳時に心内修復術が施行され、合併症なく生活していた。7歳時に心膜炎・心嚢気腫による閉塞性ショック、敗血症性ショックにて他院から搬送され、緊急心嚢ドレナージ術が施行された。血液培養から溶血性連鎖球菌、心嚢液培養から溶血性連鎖球菌とカンジダが検出された。抗菌薬/抗真菌薬投与などで全身状態改善して退院した。退院後もCRP1-5mg/dlが遷延し、8歳時にはMRCNSによる敗血症にて入院加療を要した。9歳5か月時、自宅で痙攣を発症し、救急搬送中にCPAとなり心拍再開せず死亡した。血液培養からはMRSA、溶血性連鎖球菌が検出された。AI で左房と左室内に多量の空気が確認された。剖検により下部食道から噴門部にかけてドーム状の拡張と中心部にAEFが確認され、これが繰り返す敗血症や左心内空気混入の原因と考えた。【考察】本症例は7歳時に心嚢気腫を伴う溶血性連鎖球菌性心膜炎と診断されたが、心嚢気腫の原因は同定できなかった。この時点ですでに食道と心嚢との間に瘻孔が形成されていたと考えられた。その後、瘻孔が心嚢から左房壁まで達し、AEFを形成したと推測される。AIで認めた心嚢内/左房内の空気は蘇生時の陽圧換気で入ったものと考えられる。本児の食道肉眼的所見からは瘻孔形成に至った原因を特定できず、現在、組織学的解析を行っている。【まとめ】AEFは放置されると致死的となる。原因不明の心嚢気腫/心膜炎や繰り返す菌血症を診断した場合、AEFを鑑別に入れ精査を行うことが必要である。