第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

ポスター発表

電気生理学・不整脈

ポスター発表(I-P3-2)
電気生理学・不整脈 I

2022年7月21日(木) 16:20 〜 17:20 ポスター会場

座長:髙室 基樹(北海道立子ども総合医療・療育センター 小児循環器内科)
座長:安田 東始哲(やすだクリニック小児科・内科 小児科)

[I-P3-2-11] 川崎病の慢性期フォロー中にBrugada症候群と診断された1例

藪崎 将1,2, 岩本 洋一2, 石戸 博隆2, 住友 直方3, 増谷 聡1,2,3 (1.さいたま市民医療センター 小児科, 2.埼玉医科大学総合医療センター 小児科, 3.埼玉医科大学国際医療センター 小児心臓科)

キーワード:Kawasaki, Brugada, Coved

【背景】Brugada症候群(BRS)は、type I ST変化を認めた場合に診断されるが、日差変動、日内変動を認めるため、診断が難しいことがある。川崎病の急性期の心電図で診断されず、慢性期フォロー中にBRSと診断された児を、経時的心電図所見とともに報告する。
【症例】2歳で川崎病に罹患し、通常の治療で解熱し、冠動脈病変を残さなかった。心エコーでは先天性心疾患の合併や右心容量負荷所見を認めなかった。川崎病入院時の心電図では心拍数181、軽度右軸偏位、V1でr<R’の不完全右脚ブロック(iRBBB)を認めたが、発熱時にも特徴的なST変化は認めなかった。発症約2週間で心電図を再検した際は心拍数107で、0.2mVのST上昇があったが、iRBBBとして著変なしと判断されていた。3・4歳時は明らかなiRBBB+Coved型ST上昇であったが、前年と著変なしと判断された。5歳時には波形が変化したが、iRBBB+Coved型ST上昇は認めていた。6歳時に、はじめてBRSが疑われた。家族歴を再聴取したところ、父親に不完全右脚ブロックの指摘があり、両親の心電図検査を行い、父もBRSを疑った。本人と父親に肋間をあげた心電図及びピルジカイニド負荷を行ったところ、典型的なCoved型ST変化を認め、BRSと診断した。SCN5Aには遺伝子変異は認めなかった。
【考察】当初家族歴ははっきりとしなかったが、児がBRSを疑われたため、父の診断にも至った。川崎病急性期には心電図を記録するが、年少・啼泣・頻脈であり、発熱を認めた際にもBRSに特徴的な心電図変化は認められなかった。BRSは年齢とともに心電図所見がはっきりすることが多く、また入院時には交感神経が活性化されていたことが川崎病で入院時に典型的な心電図変化を認めなかった原因である可能性がある。非定型的なiRBBB症例ではBRSを鑑別に挙げ、落ち着いた慢性期に心電図を再評価すること、1・2肋間上の心電図を記録・評価することが診断感度向上の最初のステップとして重要と考えられた。