[I-P3-5-02] CHD-PHの大規模登録研究(JACPHR)に登録した当科の主要体肺側副動脈を伴う区域性肺高血圧症に対する肺高血圧治療薬の効果に関する検討
キーワード:主要体肺側副動脈, 肺高血圧症, 症例登録研究
【背景】難治性の肺高血圧症(PH)に対して複数系統の治療薬が開発され、近年、先天性心疾患を伴うPH(CHD-PH)にも使用されている。その中でも正常肺動脈とは発生起源の異なる主要体肺側副動脈(MAPCA)に伴う“区域性PH”に対する治療効果は不明である。【目的】MAPCAを伴う区域性PHに対するPH治療薬の効果を検討する。【方法】当施設はCHD-PHの多施設症例登録研究(JACPHR)(倫理委員会承認番号:20140293)の設立に尽力した。当科に通院しているPH治療薬投薬中のCHD-PH患者で、2021年10月から2022年2月までに本研究に同意が得られ登録した20例のうち、単心室血行動態を除く17例を対象とした。MAPCAを伴う区域性PH(MAPCA群)5例とそれ以外のPH(非MAPCA群)12例の治療効果を比較した。【結果】MAPCA群と非MAPCA群ではそれぞれ、診断時年齢(中央値)が3歳6カ月と10歳3カ月、登録時年齢(中央値)が27歳2カ月と18歳7カ月、男女構成は男性2名女性3名と男性5名女性7名であった。平均肺動脈圧を診断時と登録時とで比較したところ、非MAPCA群では有意に低下していたが、MAPCA群では低下傾向ではあるものの有意差は得られなかった。また、MAPCA群のうちPH治療薬3剤併用と在宅酸素療法にもかかわらず増悪を認めた1例は、22q11.2欠失症候群の症例だった。【考察・結論】MAPCA群では非MAPCA群に比較してPH治療薬による効果は限定的であり、22q11.2欠失症候群ではさらに効果が低い可能性がある。しかし、個々の症例では平均肺動脈圧の低下を認める場合もあり、さらに症例数を重ねて検討する必要がある。全国規模のリアルワールドデータを集積するJACPHRによる解析が期待される。