The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Presentation information

会長要望セッション

会長要望セッション2(I-YB02)
多剤併用療法抵抗性の重症肺高血圧に対するReversed Potts shuntの将来性

Thu. Jul 21, 2022 10:20 AM - 11:50 AM 第4会場 (中ホールA)

座長:坂本 喜三郎(静岡県立こども病院)
座長:土井 庄三郎(国立病院機構災害医療センター)

[I-YB02-01] Potts短絡後の血行動態とQOL

増谷 聡1, 佐藤 竜太朗1, 岩本 洋一1, 石戸 博隆1, 竹田津 未生1,2, 先崎 秀明3 (1.埼玉医科大学総合医療センター 小児科, 2.北海道療育園, 3.日本医療科学大学 総合小児地域医療学講座)

Keywords:Potts shunt, hemodynamics, pulmonary hypertension

【背景】Potts短絡は大動脈・肺動脈間の人工的な短絡で、体血圧を凌駕する重症肺高血圧(supra-PH)に対し、肺移植と並ぶ治療法として期待される。しかし日本での経験は少なく、認知度も低い。検索の限り国内初のPotts短絡施行例(PMID: 35069941)について、遠隔期血行動態とQOLを中心に報告する。
【症例】現在19歳、13歳時にPotts短絡と僧帽弁再置換術を施行(静岡県立こども病院)。PHは肺動脈性と左心系疾患に伴う混合性PHであり、後者は左室心尖部低形成を伴う拘束型心筋症と後に診断した。ハンモック僧帽弁による僧帽弁逆流に対し1歳時に本学で弁置換を受けた後もPHは進行してsupra-PHとなり、8歳時の心臓カテーテル検査(カテ)では、肺動脈圧137/80(99)、大動脈圧89/52(66) 左室拡張末期圧18 mmHg、肺血管抵抗25.0 U*m2であった。肺高血圧・心不全治療にてもときに喀血を認め、人生会議で心肺移植でなく、Potts短絡を選択した。Potts短絡・僧帽弁再置換術後1年のカテ(静岡)では、肺動脈圧119/49(75)、大動脈圧86/57(71) 左室拡張末期圧20 mmHg、肺血管抵抗11.0 U*m2と肺循環は改善していた。その際、Potts短絡をバルーン拡大した。Potts短絡後約6年の現在、本人はNYHA3で穏やかに生活を楽しんでいる。短距離の歩行可、長距離は車椅子を使用、3系統の肺高血圧薬と抗心不全・抗凝固薬物療法を継続し、Potts短絡は両方向性のbalanced PH、常時酸素使用で上肢SpO2 98%、下肢SpO2 85-91%、血圧80mmHg前後、推定中心静脈圧7-14mmHgであり、MRIでのPotts短絡を介する右左短絡はnetで0.6 L/min/m2、肺体血流比0.84であった。
【考察】心肺移植の適応になる重症PHの本症例のPotts短絡後約6年の血行動態とQOLは良好と考える。本経過を通じてPotts短絡について考察する。