The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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一般口演

複雑心奇形

一般口演19(II-OR19)
複雑心奇形 Ⅱ

Fri. Jul 22, 2022 4:40 PM - 5:30 PM 第6会場 (小ホール)

座長:大月 審一(岡山大学病院 小児科)
座長:萱谷 太(大阪母子医療センター 小児循環器科)

[II-OR19-02] 心臓中空立体模型でシミュレーションし心内reroutingできた多脾症、左側静脈還流、PAPVC、不完全型AVSDの1例

鈴木 峻1, 古井 貞浩1, 岡 健介1, 横溝 亜希子1, 松原 大輔1, 関 満1, 佐藤 智幸1, 河田 政明2, 山形 崇倫1 (1.自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児科, 2.自治医科大学とちぎ子ども医療センター 小児先天性心臓血管外科)

Keywords:心臓立体中空模型, シミュレーション, 心内rerouting

【はじめに】心内rerouting手術では主に患者の3D-CT画像から手術イメージングや術式判断を行うが、限られた角度・断面からの情報しか利用できず、術者の経験に左右される部分が大きい。今回、複雑な心房内rerouting手術において心臓中空立体模型を用いたシミュレーションが有用であった症例を報告する。
【症例】胎児診断例。在胎37週0日、2850gで出生。生後、多脾症、不完全型AVSD、左側SVC、半奇静脈結合を伴う下大静脈欠損、PAPVCと診断した。心房はほぼ単心房形態で、心房の左側にはSVC、肝静脈、左PVが、心房右側には右PVが還流していた。SpO2 93%の軽度低酸素血症を呈したが、心不全症状はなく日齢18に退院した。外来では徐々に高肺血流となったが利尿薬内服で体重増加は緩徐に得られた。1歳時の心臓カテーテル検査では、Qp/Qs 3.9、mean PAp 30mmHg、Rp 1.1u・m2のhigh flow PHであった。心房内reroutingによる二心室修復の方針としたが、左PVとSVCの流入部が近接しており、さらに左右PVの血流を肝静脈流入部を避けて左側房室弁口へ導く必要があり、パッチ形成が複雑になることが予想された。患者の心臓中空立体模型を作成し手術シミュレーションを行い、事前に体静脈と肺静脈の還流経路に問題がないパッチをデザインした。生後1歳6か月時、体重9.2kgの時に心内修復術を実施。術後1年の心臓カテーテル検査ではPHやPVO、SVC狭窄は認めず、術後経過は良好である。
【考察とまとめ】実物大の模型を用い多角的な観察、手術シミュレーションすることで術式選択の信頼性が増し、手術時間短縮にも寄与する。特に、本例ではパッチ形態が複雑で、その作成に工夫を要したため、事前のシミュレーションがなかった場合、手術時間が長時間となった可能性が考えられた。複雑な解剖形態の心内rerouting手術では心臓中空立体模型を用いた手術シミュレーションは非常に有用である。