[II-OR22-02] 心肺運動負荷試験を用いたFontan術後患者の体肺静脈側副血行路に関する考察
キーワード:Fontan, 体肺静脈側副血行路, 静脈圧
【はじめに】Fontan循環では術後遠隔期に体肺静脈側副血行路(VVC)が発生する患者がいる。VVCはSpO2を低下させるが、一方で中心静脈圧の上昇を緩和している可能性もあり、全体としてFontan循環に対して悪影響を及ぼすのか好影響を及ぼすのか不明である。我々は過去にFontan術後患者では最大運動時末梢静脈圧(peakVP:mmHg)と最大運動時酸素摂取量(peakVO2: l/min/kg)の間に逆相関の関係があることを報告したが、本研究ではVVCの有無により上記2変量の関係に差が出現するかどうかを確認すことで、Fontan術後患者の運動時血行動態をVVCの有無で比較した。【方法】Fontan術後患者41例 [ VVC有り:17例、7-20歳(中央値12歳)、男:17例 ]に対して、末梢静脈圧を測定しながらTreadmillによる心肺運動負荷試験を行いpeakVPとpeakVO2を測定した。peakVO2を目的変数とし、peakVP、VVC有り、の2変数を説明変数とした重回帰分析を行い、VVCの有無がFontan循環における運動時血行動態に関与するかを検討した。【結果】peakVP(p<0.0001、95%CI=-0.91~-0.36)、VVC有り(p<0.05、95%CI=-2.5~-0.02)、とも優位にpeakVO2に寄与した。【考察】上記結果よりpeakVO2の2変数を用いた推定式は、peakVO2=41.4-0.64×PeakVP ± 1.25 (VVC有り:-、VVC無し:+)となる。この式から、同じpeakVPの患者で比較した場合、VVCが有る患者の方がpeakVO2が低いと解釈できる。これはVVCが有る患者のほうが、運動時の循環効率が悪いことを意味している。VVCがあることで静脈圧上昇を緩和している可能性はあるが、それ以上に低酸素血症が末梢組織での酸素利用に悪影響を与えている可能性がある。