第58回日本小児循環器学会総会・学術集会

講演情報

一般口演

成人先天性心疾患

一般口演24(II-OR24)
成人先天性心疾患 I

2022年7月22日(金) 15:40 〜 16:30 第7会場 (ルーム204)

座長:立野 滋(千葉市立海浜病院 成人先天性心疾患診療部)
座長:手島 秀剛(市立大村市民病院 小児科)

[II-OR24-02] 終末期、患者、家族に本当に必要なことは何ですか? ‐57才で逝った未修復AVSD女性とご両親に学んだこと‐

渡辺 まみ江, 宗内 淳, 杉谷 雄一郎, 小林 優, 江崎 大起, 山田 洸夢, 古賀 大貴 (JCHO九州病院 循環器小児科)

キーワード:ACHD診療, 終末期医療, 在宅医療

【背景と目的】ACP、緩和医療をはじめ、終末期医療への取り組みは重要性を増している.ACHD診療におけるサポートについて考えたい.【方法】2021年までの10年間に、循環器小児科が関わった20才以上の死亡18症例について1)患者背景 2)死因 3)死亡前後の診療状況 4)終末期を意識した患者・家族への関わりの有無について後方視的に検討した.【結果】1)死亡時年齢は20-73(中央値28)才、男13女5、Fontan術後4、アイゼンメンジャー症候群2、TOF3を含み疾患は多彩. 外科手術未介入6、染色体異常など発達遅滞合併4を含む.2)心不全死15、不整脈疑い1、心外病変1、不明1.心外病変を契機に急な心不全悪化が4、突然死6例中3は予側困難だった. 3)院内死亡 12、救急搬送後の死亡 5、自宅での看取りは1例だった.4)終末期の14、急変を予測しえた1例で、亡くなる前に話しあいを持てたのは5人にとどまる. 医療側から必要性を感じていても、厳しい病態が直視できない本人・家族の状況から、その機会を持ち得なかったケースも7例と目立った.【症例】AVSD未修復、ダウン症の57才女性は、長期に安定していたが、股関節炎によるADL低下から急な経過をたどった. 緊急入院後、80才台のご両親が、強く付き添いを希望されたため、急遽在宅医療に移行した.訪問診療、訪問看護の大きなサポートのもとで、ご家族は時間をかけて状態を受け入れられ、退院後1カ月余りを過ごした自宅で看取られた.【考察】ACHD終末期においては、心疾患のみならず心外病変も悪化の契機となり、担当科との密な協働診療は必須.厳しい病状でも、長期に病気と共存してきた本人・家族の思いはさまざまで、必要なサポートは個々で大きく異なる. 在宅医療や介護サポートの検討は、MSWをはじめ、専門医、訪問ステーションスタッフとの連携がかかせない.ACPの普及は望ましいことだが、コロナ渦の医療現場では制約も多く、大きなチャレンジを求められている時代である.