[II-P4-1-08] 肝動脈-門脈shunt・静脈管開存による肝動静脈瘻のため、生直後から高拍出性心不全に至ったIAA(A)、5弓遺残の新生児例
Keywords:肝動静脈瘻, 高拍出性心不全, 静脈管
【緒言】先天性の肝臓血管奇形(HAVM)に伴う高拍出性心不全(HOHF)の報告は稀で、新生児期に肝動脈-門脈(HA-PV)shunt・静脈管開存による肝動静脈瘻(HAVF)でHOHFに至った報告はにない。【症例】日齢1、男児、在胎39週4日、2290g、第1子、AS7/4/8点。家族歴:曾祖父の妹はOslar病。祖父・母は鼻出血多い。IAAの診断で当院に新生児搬送。生直後から重度PH・低血圧の状態で挿管・NO・カテコラミン投与を必要とし、DIC傾向で血小板輸血も要した。ECGでIAA(A)、FAAと診断したが、著明な右室拡大とPHから心外短絡性病変を疑った。腹部shunt音・肝腫大があり、広範なHAVM・PDV開存を認め、HAVFが原因のHyperdynamic stateにDICも合併し優先的な治療が必要と判断した。広範肝切除/肝移植の必要性を考慮してA大学病院小児外科に相談し、日齢4Bil. PABを行い、日齢7PGE1投与下にA大学病院NICUへ転院搬送した。しかし転院後は一転して状態は安定し、DA狭小化・大動脈縮窄の進行のため日齢21に当院へ逆搬送された際には、腹部shunt音は消失、PDVは閉鎖しHA-PV短絡が残るのみで、HAVFによるHOHFは解消されていた。同日FAAにAAO-DAO bypass(6mm GoreTex)、日齢31にPAB解除/PDA切離を行った。術後経過は良好で、現在は外来経過観察中。家族歴・遺伝子検査からHHT2と診断した。【考察】HAVMにおいて、HA-HV短絡に比してHA-PV短絡は心不全リスクが低いとされる。本症例の本態はPDVを介したHA-PV短絡血流の右心系への直接還流で、新生児特有の条件がHyperdynamic stateを招いた。広範肝切除のリスク・移植困難な月齢からは厳しい予後も予測していたが、PDV閉鎖で状況は好転した。選択的肝動脈塞栓が新生児HAVMによりPHが改善した報告からは、本症例ではPDVデバイス閉鎖が急性期治療の選択肢となった可能性がある。原因不明のHOHFでは心外病変の検索が重要で、またHAVMでは短絡部位、PDV含めた詳細な評価が、治療選択肢を示しうる教訓的な症例と考える。