The 58th Annual Meeting of Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

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ポスター発表

一般心臓病学

ポスター発表(II-P4-1)
一般心臓病学 II

Fri. Jul 22, 2022 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場

座長:野村 裕一(鹿児島市立病院 小児科)
座長:前野 泰樹(聖マリア病院 新生児科)

[II-P4-1-09] 右室内血栓、肺血栓塞栓症を認めた頻回再発型ネフローゼ症候群の1例

岡田 怜1, 阪田 美穂1, 神吉 直宙1, 久呉 真章1, 三木 康暢2, 田中 敏克2 (1.日本赤十字社 姫路赤十字病院 小児科, 2.兵庫県立こども病院 循環器内科)

Keywords:右室内血栓, 肺血栓塞栓症, ネフローゼ症候群

【症例】頻回再発型ネフローゼ症候群の男児。5歳で発症し、以降再発、寛解を繰り返し、7歳まで免疫抑制剤による治療を受けていたが、1年間は再発なく経過していた。8歳時に感冒を契機に再発し、嘔吐・腹痛による内服困難のため入院した。高度蛋白尿、低アルブミン血症(Alb 0.5 g/dL)、血管内脱水を認めた。ステロイド投与を開始し、嘔吐・腹痛は軽快し、尿量が増加した。入院後4日目に腹痛が再発し、5日目に尿量が低下した。同日より呼吸苦、SpO2低下が見られた。6日目に三尖弁前尖腱索に付着した10.4*17.0mmの右室内血栓、左右肺動脈血栓を認め、凝固線溶異常(AT 61.5 %、Fib 572 mg/dL、D-dimer 5.8 μg/dL)も認めた。ヘパリン・ワーファリンによる治療を開始し、12日目に右室内血栓の消失、15日目に右肺動脈血栓の消失を確認したが、左肺動脈血栓は残存した。発症後1ヶ月半時の肺血流シンチグラフィーで左中下肺野の血流低下を認めた。現在、左肺動脈血栓の残存に対してワーファリンによる治療を継続している。【考察】ネフローゼ症候群は、蛋白性凝固因子の合成増加や線溶系因子の漏出、血管内脱水、ステロイドの使用などにより凝固異常をきたしやすい。小児ネフローゼ症候群に心室内血栓を合併する例は数例報告されているが、全例が右心系に見られており、偶発的に発見されている。また、小児ネフローゼ症候群の17-27%に肺血栓塞栓症が発見されたという報告もある。ネフローゼ症候群の中でも血清Alb値が2 g/dL未満の場合やAT 70 %未満、Fib 600 mg/dL以上、診断後3ヶ月以内、12歳以上、ステロイド抵抗性・頻回再発型ネフローゼ症候群では特に血栓症リスクが高いと報告されている。本症例では、右室内血栓を生じた段階で発見・治療ができれば肺血栓塞栓症の発症を防ぎ得た可能性がある。リスクを有する児では無症状であっても凝固能検査や心臓超音波検査を積極的に行うことで早期に発見できる可能性がある。