[II-P4-3-05] フレカイニド中毒・難治性心室頻拍に対して、体外式膜型人工肺(ECMO)を用いて救命しえた乳児例
Keywords:フレカイニド, ECMO, 不整脈
【背景】フレカイニドは1c群に属する抗不整脈薬である。乳幼児では、ミルクにより吸収が阻害され、血中濃度が低下しやすいが、中毒域までの幅は狭く中毒に注意が必要である。今回我々はフレカイニド中毒による難治性心室頻拍を経験し、ECMO使用し救命したので、報告する。【臨床経過】症例は1ヶ月男児。数日間の哺乳不良を契機に、心拍数250bpmの上室頻拍と判明。ATPで頻拍停止出来ず、当院に紹介搬送。循環不全のために、前医にて気管内挿管。当院入院時はATP 0.4mg/kgで頓挫し、心電図から潜在性WPW症候群と診断。フレカイニド 100mg/m2/dayを開始し、頻拍発作の再燃なし。誤嚥性肺炎に対して呼吸管理を継続。入院3日目にQRS幅=108msecに延長し、フレカイニドを75mg/m2/dayに減量。入院5日目心室頻拍を発症。同期下除細動・アミオダロン無効。徐々に血圧維持できず、ECMO導入。導入直前のフレカイニド血中濃度は1007ng/ml(入院3日目は438ng/ml)。ECMO導入後は正常洞調律へ復帰。ECMO使用期間は11日間。頭部MRIも含めて中枢神経後遺症は認めなかった。1歳前後を目処に、電気生理検査・アブレーション治療を計画し、アミオダロン・プロプラノロールで内服管理中。【考察】経腸栄養を見越して投与量を100mg/m2/dayとしたが人工呼吸器管理中に経腸栄養が少なかったため、結果的に血中濃度が急上昇したと考察される。乳児ではフレカイニドの半減期が長いためQRS幅をモニターし延長し始めた段階で、休薬により回避できた可能性が示唆された。【結語】フレカイニド中毒による難治性心室頻拍に対するECMO救命例を経験した。挿管管理中・絶食中には、フレカイニド血中濃度が急上昇する可能性があるので、血中濃度に加えQRS幅も確認しながら投与量の慎重な調整が必要だと思われた。