[II-P4-3-10] 術後房室接合部異所性頻拍(JET)が心機能に及ぼす影響
Keywords:術後房室接合部異所性頻拍, 電気的心臓計測モニター, JET
【背景】術後JETは心房心室収縮の同期性が失われ血行動態の破綻をきたす。手術操作に伴う房室結節近傍の機械的牽引や虚血などが原因とされる。電気的心臓計測モニター(エスクロン)は非侵襲的に大動脈中の電気抵抗の変化率を測定し、心拍出量(CO)、一回拍出量(SV)、収縮性係数(ICON)、胸郭内体液量(TFC)などを算出する。【目的】重症度として対照的な経過の2例において、JETが心機能に及ぼす影響をエスクロンで検討する。【症例1】3か月男児、心室中隔欠損に対しパッチ閉鎖術。帰室後1時間でHR200の頻拍が出現した。narrow QRSで房室解離を認めJETと診断しアミオダロンを開始した。クーリングやペーシングも併用したが改善せず、JET出現3時間後に血圧40になり心臓マッサージを行った。蘇生処置後は血圧は回復し、アミオダロンの効果がみられHR160に低下した。HRが220を超えるとICON、SV、COが低下し、200に戻るとこれらも一時的に改善した。再度HRが220になり心停止に至ったが、肺うっ血を反映しTFC上昇を伴い、HR、ICON、SV、COが急激に低下した。【症例2】10歳女児、心房中隔欠損に対し直接閉鎖術。術後2日目に、モニター心電図でHR100から120に上昇し、narrow QRSで房室解離を認めJETと診断した。HR120で動悸もないため、クーリングと鎮痛のみで経過をみたところ、12時間後に自然停止した。頻拍発作中の心エコーでは心機能は正常と評価したが、JETが消失するとICON、SV、COが上昇、TFCは低下し、心機能が改善してくる様子が記録された。【考察】症例1は頻拍が続き、急激に血行動態が破綻した重症例である。HR200では心機能を維持しており、220を超えるとICON、SV、COは急激に低下した。症例2からHR120程度のJETでも心機能の低下をきたすことが分かった。HRが多くないJETではどのくらいの持続時間まで許容できるかは今後の課題である。心エコーでは認識できない心機能の変化を検出できることがエスクロンの利点である。