[II-P4-3-09] 乳児期早期の心臓手術後の重症感染症におけるリスク因子の検討
Keywords:心臓手術後, 敗血症, 縦隔炎
【背景】心臓手術後に敗血症や縦隔炎を合併することがあり、重度な後遺症の残存や死亡する症例もある。今回我々は重症感染症を発症した症例を後方視的に検討し、リスク因子を同定することを目的した。【方法】2016-2021年の6年間に乳児早期(生後90日以内)に心臓手術をうけた患者のうち、術後に血液培養陽性または縦隔炎でドレナージを要した二心室循環の症例(単心室循環は除外)の患者背景、検査所見、術式、起炎菌を後方視的に検討した。重症度をそろえ、対象群124例(2020-2021年の2年間に生後90日以内の心臓手術症例[重症感染なし])と比較した。【結果】重症術後感染症の患者21名で疾患の内訳はTGA5例、TOF/PAVSD5例、VSD3例、COA3例、AVSD2例、TAPVC1例、Truncus arterious1例、aortic-left ventricular tunnel1例であった。手術時日齢の中央値は16日, 手術時体重2.9kgであった。重症感染症の発症時期の中央値は術後36日目で、15例(71.4%)が発症時に中心静脈カテーテルや挿管チューブ等の体外異物が挿入されていた。起炎菌は表皮ブドウ球菌が31%と最多で、次いで黄色ブドウ球菌が28%と多く、10例(47.6%)はメチシリン耐性菌またはベータラクタマーゼ産生菌であった。感染群では対象群と比較して、shunt手術症例が多い(38.1% vs 17.7%, p≡0.033)、体外異物の2週間以上の留置(71.4% vs 26.6%, p<0.0001)、1週間以上遷延する胸腹水 (28.6% vs 8.9%, p≡0.0095)で有意差を認めた。また、感染群全例が先天性胸腺欠損または手術時に胸腺切除例で対象群とわずかに有意差を認めた (100% vs 78.4%, p≡0.026)。感染群では死亡症例が多い傾向(8例(38.1%) vs 2例(1.6%), p<0.001)で、感染群のうち4例が胸腹水に関連した死亡であった。【結論】体内外異物や胸腹水の遷延が術後感染症のリスク因子であると示唆された、また、胸腺切除や先天性胸腺欠損もリスク因子になりうる可能性があり今後更なる検討が必要である。