[II-P4-4-02] 川崎病におけるウロビリノーゲン尿の意義
Keywords:川崎病, ウロビリノーゲン, 腸肝循環
【背景】川崎病では無菌性膿尿はよく知られているが、ウロビリノーゲン尿についての考察はない。直接ビリルビンは胆汁に排泄された後、腸内細菌によりウロビリノーゲンに変換される。腸から吸収され門脈から肝臓に至り、一部は大循環に入り腎より尿中に排泄される。尿細管で再吸収もされる。胆嚢炎、麻痺性イレウス等の消化器症状、腎障害などを合併する川崎病は重症のことがあるが、ウロビリノーゲンの動態はこれら臓器に関与し、重症度を反映している可能性がある。【目的】ウロビリノーゲン尿と臨床像や検査値の関係を検討する。【対象】2017年1月1日から2021年12月31日に入院した川崎病患者307名。【方法】尿中ウロビリノーゲン定量(基準値1.0 mg/dL以下)で、基準値上限の1.0 (L群44例)と2.0以上(H群7例)の2群間を比較した。【結果】有意差を認めたのはAST 92.2 vs 460.3(L群 vs H群、p<0.001)、TB 0.9 vs 2.0(p=0.006)、DB 0.5 vs 1.5(p=0.006)、DB/IB 1.2 vs 2.7(p=0.01)、フィブリノゲン 686.4 vs 886.1(p=0.02)、血沈 56.1 vs 77.6(p=0.05)だった。有意差はないが、小林スコア4 vs 6、不応率 20.5% vs 42.9%、再発率 13.6% vs 28.6%、尿中β2ミクログロブリン 9431 vs 14563、抗菌薬先行率 36.4% vs 71.4%、腹部症状合併27.3% vs 42.9%で、いずれもH群が高かった。【考察】川崎病で尿中ウロビリノーゲン高値は、以下の4つの病態を反映している。(1)急性期の肝機能低下によりウロビリノーゲン排泄が低下し大循環に入るウロビリノーゲンが増加。(2)急性期の直接ビリルビン上昇により腸管に到達する直接ビリルビンが増加しウロビリノーゲンも増加。(3)腸管内容停滞(イレウス症状)によりウロビリノーゲンの吸収増加。(4)尿細管障害によるウロビリノーゲンの再吸収低下。尿中ウロビリノーゲン2.0以上では不応例、再発例が多く、肝障害、胆嚢炎、腎障害、消化器症状の合併など、重症化に注意して診療するとよい。