[II-P4-4-10] 熱傷後の川崎病は2つの機序で発症する
Keywords:熱傷 , 川崎病, HSP
【背景】熱傷後に発症した川崎病の報告はあるが不応例はまれである. 創部の起因菌からの外毒素であるToxic Shock Syndrome Toxin-1(TSST-1)の関与が指摘されているが, TSST-1の関与を否定した報告はない. 今回, 熱傷後に発症した川崎病不応例でTSST-1の関与が否定的な1例を経験し, 新たな病態を推測したので報告する.
【症例】11か月男児. 熱いコーヒーを被って体幹部に熱傷面積10.5%, 2度の熱傷を生じた. 受傷4日目に発熱あり, 創部感染を考慮し抗菌薬を開始した. 受傷7日目に, 主要症状5項目で川崎病と診断し, 大量免疫グロブリン療法とアスピリンの内服治療を行なった. 不応のため, グロブリンを追加し解熱した. 冠動脈病変は認めなかった. 創部からMRSAが検出されたが, 受傷9日目のTSST-1分析ではTCRVβ2陽性細胞中のCD45R0細胞の割合は12.5%と低値でありTSST-1の関与は否定的であった.
【考察】熱傷後に発症する川崎病は、熱傷面積が小さいほど早期に発症する報告があり, 熱傷面積の大きい晩期発症例ではTSST-1の関与が指摘されている. 本症例は早期発症, MRSAが創部から検出されたが, TSST-1の関与が否定的であり, CRPが陰性であることから創部感染由来のTSST-1が川崎病発症の契機とは考えにくい. 一方で, 2度の重度熱傷, 高サイトカインを反映するフェリチンが高値であることから, 近年病因論として注目されている自然免疫, すなわちHeat Shock Protein(HSP)が関与していると考えられ, 早期発症の病態の可能性がある. さらに, 熱傷面積の大きい早期発症の川崎病は不応例になりやすい可能性も示唆された. また, 晩期発症の原因となる細菌感染を予防する目的で, TSST-1抗体価が低い7か月から2歳, 感染合併のリスクが高い熱傷面積15%以上で抗菌薬の予防投与をすべきである.
【結論】熱傷後の川崎病は, HSPが関与する早期発症型(受傷3日前後)とTSST-1が関与する晩期発症型(受傷10日前後)の2つの機序がある.
【症例】11か月男児. 熱いコーヒーを被って体幹部に熱傷面積10.5%, 2度の熱傷を生じた. 受傷4日目に発熱あり, 創部感染を考慮し抗菌薬を開始した. 受傷7日目に, 主要症状5項目で川崎病と診断し, 大量免疫グロブリン療法とアスピリンの内服治療を行なった. 不応のため, グロブリンを追加し解熱した. 冠動脈病変は認めなかった. 創部からMRSAが検出されたが, 受傷9日目のTSST-1分析ではTCRVβ2陽性細胞中のCD45R0細胞の割合は12.5%と低値でありTSST-1の関与は否定的であった.
【考察】熱傷後に発症する川崎病は、熱傷面積が小さいほど早期に発症する報告があり, 熱傷面積の大きい晩期発症例ではTSST-1の関与が指摘されている. 本症例は早期発症, MRSAが創部から検出されたが, TSST-1の関与が否定的であり, CRPが陰性であることから創部感染由来のTSST-1が川崎病発症の契機とは考えにくい. 一方で, 2度の重度熱傷, 高サイトカインを反映するフェリチンが高値であることから, 近年病因論として注目されている自然免疫, すなわちHeat Shock Protein(HSP)が関与していると考えられ, 早期発症の病態の可能性がある. さらに, 熱傷面積の大きい早期発症の川崎病は不応例になりやすい可能性も示唆された. また, 晩期発症の原因となる細菌感染を予防する目的で, TSST-1抗体価が低い7か月から2歳, 感染合併のリスクが高い熱傷面積15%以上で抗菌薬の予防投与をすべきである.
【結論】熱傷後の川崎病は, HSPが関与する早期発症型(受傷3日前後)とTSST-1が関与する晩期発症型(受傷10日前後)の2つの機序がある.