[II-P4-6-03] PDA device closure後に生じたたこつぼ症候群: 高齢者における治療後の留意点
キーワード:動脈管開存症, たこつぼ症候群, Device closure
【背景】高齢者における動脈管開存症(PDA)に対するdevice closureは残存短絡, 溶血, 大動脈解離などのリスクを伴うが, 閉鎖後にたこつぼ症候群を発症した報告はまれである. 【症例】症例は80代女性. 労作時の息切れを主訴に近医を受診. PDA, 持続性心房細動の診断で, PDAに対するcatheter device closure目的に当院を紹介受診した.造影CT検査にてKrichenko type AのPDAを確認した. 石灰化はAorta sideに軽度であった. 心臓カテーテル検査にてQp/Qs = 2.1であり, 大動脈造影にてPDAのPA sideの径は4.4 mmであったため, 12/10 mm Amplatzer Duct Occluderを用いてPDA device closureを施行した. 術翌日のフォローの12誘導心電図にて I-III, aVF, V2-5誘導に巨大陰性 T 波を認めた. 明らかな胸部症状の訴えはなく, 血清CKの上昇も認めなかったが,高感度トロポニンIは311.2 pg/mlと上昇を認めた.経胸壁心エコー図検査では, 左室心尖部のballooningと基部の過収縮が認められ, たこつぼ症候群が疑われた. 123I-BMIPPと99mTc-tetrofosminのdual 心筋 SPECTにより,左室心尖部に限局した脂肪酸代謝および灌流の低下を認め, たこつぼ症候群の診断に至った.ACE阻害薬の内服を開始し, 約1週間注意深くフォローしたところ, 左心機能の改善と陰性T波の消失を確認した.約2年間心不全などのイベント無く経過している.【考察】PDA device closureは留置直後より左室前負荷の減少と後負荷の増加という血行動態の変化をもたらす. これらはafterload mismatchを引き起こす可能性があり, 新生児や乳児においては, PDA閉鎖後に一過性に左室駆出率が低下したという報告が散見される. 成人における左室駆出率の低下の報告は小児ほど多くはないが, 本症例のように急激な血行動態の変化が左室へのストレスとなり, たこつぼ症候群を引き起こす可能性がある. 高齢女性に対するPDA device closureには術後の慎重なモニタリングが必要である.