[II-P4-7-04] 失神を契機に診断された非閉塞性肥大型心筋症に合併したmyocardial bridge
Keywords:myocardial bridge, 肥大型心筋症, 突然死
【背景】myocardial bridge(以下MB)は良性の先天性冠動脈奇形とされているが、肥大型心筋症(以下HCM)に合併するMBは突然死の原因となると報告されている。しかし、小児におけるHCMに合併したMBの報告例は少ない。【目的・方法】小児のHCMに合併するMBの診断、治療、予後等の全体像について、当院で経験したHCMに合併したMBと文献での過去報告例をもとに明らかにすること。【結果】自験例は15歳男児、運動中の胸痛後に失神し、当院を受診した。エコーで非閉塞性HCMと診断、失神後心電図、トレッドミル心電図、運動負荷心筋シンチグラフィー、CT perfusionで心筋虚血所見を認めた。冠動脈造影、CTでMBと診断した。β遮断薬の内服、運動制限で症状なく経過している。過去報告では小児のHCMの最大40%にMBが合併し、症状は胸痛、失神であった。診断にはCT、冠動脈造影が施行された。β遮断薬やCa拮抗薬を内服するケースと、外科的にMBをunroofさせて良好な結果を得たと報告されている。HCMに合併したMBは5年以内の生存率が67%と不良である。【考察】自験例は失神を契機にして診断された肥大型心筋症に合併したMBの一例である。HCMで虚血症状が生じる機序としては左室流出路狭窄が知られているが、HCMで虚血症状がある場合にはMBも鑑別に挙げる必要がある。MBは剖検例の最大45%に認められる頻度の高い冠動脈奇形であるが、実際に心筋虚血を来すことは少ない。一方で、HCMに合併するMBでは心筋肥大、過収縮から心筋虚血を来しやすい。自験例では徐拍化して拡張期血流還流時間を延長させ良好な転帰を得ていると考えられる。本邦では小児のMBの報告が少なく、治療や予後について不明な点が多く症例の蓄積が望まれる。【結論】HCMにおけるMB合併の有無は予後に大きく影響するため、診断時にはその存在を考慮しておく必要がある。