[II-P5-1-06] 大動脈縮窄症に対する鎖骨下動脈フラップ法の遠隔期成績の検討
Keywords:大動脈縮窄症, 鎖骨下動脈フラップ法, バルーン治療
【背景】大動脈縮窄症(CoA)に対する外科治療の主流は, 直接吻合法または拡大大動脈弓再建法であるが, 我々はより侵襲度が低い術式として, 鎖骨下動脈フラップ法(SFA法)を症例を選び適用してきた. 当院におけるSFA法の臨床成績を振り返り, 治療方針の妥当性について検討する.【対象と方法】2010年9月から2021年8月までの期間中, 左側開胸下にSFA法で治療を行なったCoA症例に対し診療録に基づく後方視的な調査を行った. 【結果】症例数は26(男児17, 女児9), simple CoAは6例, CoA complexは20例で, 手術時日齢は中央値 16.5日(7-194日), 手術時体重は 3.0kg(2.1-5.1kg), 観察期間は 6.6±3.0年, 手術は全例単純遮断下に行い, CoA complexに対しては全例肺動脈絞扼術を併施した. 手術死亡はなく, 遠隔期に心疾患に関連しない要因で2例を失った. 遠隔期再狭窄に対するバルーン拡張を8症例(29%)のべ13回に要したが, 再手術を要した症例は認めなかった. 術後の圧較差は 5.0±3.0mmHg vs 32.5±22.7mmHg(非バルーン群vsバルーン群)であったが, 後者はバルーン介入によって最終的に 5.5±3.5mmHgまで改善を認めた. 両群の手術時日齢と体重はそれぞれ 41.6±53.6日 vs 28.9±32.1日(P>0.05), 3.2±0.7kg vs 2.9±0.7kg(P>0.05) であった. なお, 術後一過性の横隔神経麻痺と反回神経麻痺をそれぞれ1例(4%)に認めたものの, その他の合併症は認めなかった. また, 下肢遮断時間は 31.0±6.6minで,術後下肢対麻痺は認めていない.【考察】CoAに対するSFA法の術後合併症は軽微であった. 遠隔期の再狭窄率は満足いくものではなかったが, バルーン拡張を行うことで再手術は回避され, 最終的な圧較差も許容できる範囲であった. SFA法は侵襲度が低く, 低体重や全身状態不良など手術リスクの高い症例においては依然として有効な治療選択肢になりうるものと考えられた.