[II-P5-2-08] 高いCVPが関与したと考えられた蛋白漏出性胃腸症を発症した非Fontan循環の1例
Keywords:蛋白漏出性胃腸症, 非Fontan循環, Yasui手術
【背景】先天性心疾患における蛋白漏出性胃腸症(protein losing enteropathy; PLE)はFontan術後患者の代表的な合併症として知られているが、非Fontan循環患者への合併は極めて稀である。今回、非Fontan循環でありながらPLEを発症した1例を経験したので報告する。【症例】6か月女児、22q11.2欠失症候群、大動脈弓離断症、両大血管右室起始症、右側大動脈弓、大動脈二尖弁に対して生後13日目に大動脈弓形成術と肺動脈絞扼術を施行した。生後2か月に拡張した肺動脈の圧排による気管狭窄をきたしたために高PEEP療法を開始した。生後3か月頃より低蛋白血症を認めていたが、低栄養と心不全によるものと考え、対症療法を行っていた。生後4か月の心臓カテーテル検査では両心室の流出路狭窄(大動脈弁圧較差12mmHg、肺動脈絞扼術部圧較差24mmHg)と高PEEP療法(PEEP 10mmH2O)によってCVP14mmHgと高値であった。生後5か月に心内修復術(Yasui手術)を施行したが、術後も低蛋白血症が遷延しており、便中α1-アンチトリプシンの増加(354 mg/dL)、上部消化管内視鏡検査で十二指腸に白斑、病理学的検査で絨毛内に拡張リンパ管を認めたため、PLEの診断としてオクトレオチド皮下注射療法を開始した。オクトレオチドを2μg/日から開始し、80μg/日まで漸増したところ、低蛋白血症は改善した。現在心内修復術後1年経過しているが、CVP10mmHgまで改善しており、PLEの再燃は認めていない。【考察】非Fontan循環でも高いCVPをきたす病態におけるPLEの合併報告は僅かながら散見される。本症例も姑息術後はCVPが高い状態であり、PLEの発症に寄与した可能性がある。【結語】非Fontan循環であっても高CVPを呈する低蛋白血症の症例ではPLEに留意する必要がある。