[II-P5-3-05] 急性期に動脈瘤が認められなかった部位に冠動脈狭窄病変が進行した川崎病の一例
Keywords:川崎病, 冠動脈狭窄, 冠動脈瘤
【背景】川崎病による冠動脈狭窄性病変は冠動脈瘤形成後に約1-2年の経過を経て、動脈瘤の前後に生じることが多い。今回、冠動脈瘤が認められなかった部位に狭窄性病変が出現した症例を経験したので報告する。【症例】7歳女児。1歳時に発熱、眼球結膜充血、口唇発赤あるも抗菌薬のみで加療された既往がある。3歳時に川崎病罹患し、第3病日に免疫グロブリン静注(IVIG)及びアスピリン(ASA)内服で加療された。治療翌日には解熱したが、超音波検査で右冠動脈瘤を認めた。冠動脈形態評価のため施行した冠動脈CTでも同部の冠動脈瘤が確認された。川崎病罹患3か月後に初回の心臓カテーテル検査を施行した。冠動脈造影では右冠動脈seg2に4.7 mm(Z score 9.70)の瘤が確認できたほか、左冠動脈seg6に0.7 mmの狭窄病変を認めた。自覚症状はなく、ASA内服のみ継続とした。5歳時(川崎病罹患2年後)の冠動脈造影では右冠動脈瘤は軽度退縮がみられたが、左冠動脈の狭窄はやや目立つようになった。なお、自覚症状はなく、安静時心電図、トレッドミルによる運動負荷試験でも異常は認めなかった。しかし、7歳時(川崎病罹患4年後)はseg6の径が0.6 mmとさらに狭窄は進行しており、トレッドミルによる運動負荷試験ではBruce stage 4で胸痛および心電図上のV3、V4のST低下を認めた。そのため、β遮断薬の内服と運動制限(運動区分C)を開始した。冠動脈バイパス手術を待機中である。【考察】本症例では右冠動脈瘤を指摘されていたが、左冠動脈狭窄性病変は心臓カテーテル検査を行うまで指摘されなかった。冠動脈瘤を生じた症例では超音波検査で拡張部の評価を行うだけでなく、冠動脈全体を心臓カテーテル検査、冠動脈CTで確認していく必要がある。川崎病による狭窄性病変は冠動脈瘤に過度な内膜の増殖が起こり引き起こし、通常は動脈瘤の前後に生じる。本例の機序は直近の冠動脈CT、バイパス時の術中所見を含めて検討したいと考えている。