[II-SY10-04] 成人先天性心疾患患者の終末期医療の現状と課題
Keywords:成人先天性心疾患, 心不全, 緩和医療
【背景】医療の発達により先天性心疾患患者の予後は大きく改善し、ほとんどの患者が成人を迎え、長期的に生存することが可能となっている。先天性心疾患患者は心不全あるいは心不全リスクが長期にわたり持続する病態で心不全のステージBであり、長い心不全の経過の中で将来に向けた自発的な意思決定のプロセス(アドバンス・ケア・プラニング)が重視されるようになってきている。【目的】成人先天性心疾患患者の終末期医療について、これまでの当院での対応について把握し、今後の課題を明らかにすること。【方法】当科における18歳以上の成人先天性心疾患入院患者について、心不全入院や死亡患者での訪問看護や訪問診療などの含めたチーム医療の導入の有無、療養場所の希望などの意思決定支援の有無、症状緩和のためのケアの有無、について検討を行った。【結果】当科における18歳以上の年間総入院患者数は1991年には86名だったが、2001年154名、2011年305名、2019年には559名、COVID19の流行下である2021年でも391名と増加の一途をたどっていた。2011年から2021年の間のそれぞれの年での心不全入院例や死亡例について検討すると、2011年には心不全で入院歴のあった患者に対しチーム医療が導入されていたのは13%程度だったが、2021年には28%であった。また、2011年の死亡患者7名(平均年齢36歳)では意思決定支援はほとんどされていなかったが、2021年では死亡患者9名(平均年齢51歳)全員に対し、数年前から1年以内に意思決定支援がされていた。【結語】ここ10年の間で、訪問看護や訪問診療の導入や意思決定支援をされていた患者の割合は確実に多くなっていた。生活背景や家族背景が多様であり、疾患や年齢が多岐にわたっていることから緩和ケアなどについては個々の状況に合わせた対応が必要であった。今後も多職種にわたる体制構築を行っていく必要があると考えられた。